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山脇立嗣が60歳で初受賞!「第29回OMS戯曲賞」授賞式&公開選評会レポート

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(左から)「第29回OMS戯曲賞」佳作を受賞した私道かぴ、大賞を受賞した山脇立嗣。 [撮影]吉永美和子(このページすべて)



関西小劇場界の中心的な存在だった劇場「扇町ミュージアムスクエア(OMS)」の10周年記念事業として1994年に始まり、OMS閉館後も継続されている「OMS戯曲賞」(主催:大阪ガスネットワーク(株))。「関西2府4県に在住、または関西を主たる活躍の場とする劇作家」の「実際に上演が行われた」戯曲のみを対象にするという、全国的に見ても珍しい戯曲賞だ。しかし、2020年の新作が対象となった第28回は、新型コロナウイルスによって上演中止・延期の公演が相次いだため、初めて未上演の戯曲(書き下ろしも含む)も含まれることに。その結果、大賞・佳作とも未上演の戯曲(さらにどちらも初ノミネート)が選ばれるという、驚きの結果となった。

(左から)選考委員の鈴木裕美、土田英生、佃典彦、樋口ミユ。もう一人の選考委員の佐藤信は、今回欠席した。


そして2021年の新作が対象の第29回も、相変わらず新型コロナの影響で、上演活動が例年より困難になっている状況を受けて、引き続き未上演の作品も応募可能に。そうして集まった41作品の中から、最終選考にノミネートされたのは、以下の7作品だ(作者50音順・()内は上演団体)。

キタモトマサヤ『われわれは遠くから来た、そしてまた遠くへ行くのだ』(遊劇体)
近藤輝一『バス・ストップ』※未上演。
三枝希望『かもめごっこ』(プロジェクトKUTO-10)
私道かぴ『いきてるみ』(安住の地)
田辺剛『透明な山羊』(下鴨車窓)
土橋淳志『その間にあるもの』(A級MissingLink)
山脇立嗣『わたしのこえがきこえますか』※未上演

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第29回の選考会&授賞式は、12月20日に開催されたが、第一回目から選考委員を務め続けている佐藤信が体調不良のため、今回に限り選考を断念。残りの4人──鈴木裕美、佃典彦、土田英生、樋口ミユに一任するという、異例の事態となった。約5時間に及ぶ選考の結果、大賞は山脇立嗣『わたしのこえがきこえますか』、佳作は私道かぴ『いきてるみ』が選ばれ、授賞式でそれぞれ賞状&賞金を受け取った。

賞状と賞金を受け取る山脇立嗣。


大賞の山脇は、1962年生まれの60歳。90年代から、健常者と聾者が共に芝居を作る「劇団あしたの会」で演劇活動を行い、執筆した戯曲が映画『アイ・ラヴ・フレンズ』(監督:大澤豊)の原作となったほどの実力者だが、作品の上演機会がさほど多くないこともあり、関係者の間でもあまりその名を知られていなかったダークホースだ。『わたしのこえがきこえますか』は、今回の応募のために書き下ろした未上演作品となる。

山脇立嗣。


山脇は受賞の挨拶で「今から27年前に、聴覚に障がいを持っておられる方たちと劇団を立ち上げ、聾の人たちの歴史的な事件やご苦労などをじょじょに知っていくうちに、これを作品にしたいと思って書き始めました」と自己紹介をし「いつも『こんな作品で、本当に伝わるのか?』と思いながら、聾の人にまつわる作品を書いていましたが、そういう作品の一つが今回評価されて、すごく嬉しいです」と、控えめに喜びを見せながら語った。

賞状と賞金を受け取る私道かぴ。


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