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稲葉浩志、ソロで繰り広げる実験的かつ内省的な音楽活動 新曲「BANTAM」リリースや7年ぶりソロコンサートに向けて

Real Sound

稲葉浩志『遠くまで』

B’zの稲葉浩志が1月28日、蔦谷好位置をサウンドプロデューサーに迎えた新たなソロ曲「BANTAM」を配信リリース。さらに2月1日から2日間、7年ぶりとなるソロコンサート『Koshi Inaba LIVE 2023 ~en3.5~』も横浜アリーナで開催。ソロ活動が再び活発になってきた。

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 稲葉は1997年、アルバム『マグマ』のリリースを機にソロデビュー。同作は『第12回日本ゴールドディスク大賞』ロック・アルバム・オブ・ザ・イヤーに輝くなど高く評価された。また1998年発表のシングル曲「遠くまで」がヒットし、ソロアーティストとしても強い存在感を放つようになった。

■20年前に大阪で起きた稲葉浩志の前座パフォーマンス

 稲葉はソロ時、B’zではできない実験をたくさん試みている。なかでも筆者が印象的だったのは、20年前の2003年3月20日の出来事である。

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 若者たちが行き交うファッションの街・大阪の北堀江にヒルズパン工場というスタンディング時は200人、シッティング時は100人という決して大きくないライブハウスが誕生した。その第1回公演『THURSDAY LIVE at hillsパン工場 “ROCK NIGHT”』のメインアクト、WAGの前座として稲葉浩志が誰にも知られることなく出演したのだ。ちなみにシークレットゲスト、オープニングアクトなどさまざまな称され方をされているが、筆者が当時、耳にした出演形式は「前座」だった。シークレットだった理由はもちろん、事前告知をするときわめて大きな混乱が起きる可能性があったため。しかも稲葉にとってはこれが初のソロライブだったという。

 当時、筆者を含めた大阪のメディア関係者の間にはとてつもない衝撃が走ったのを記憶している。2003年といえばSNSも普及しておらず、動画も気軽に撮影・配信できなかった時代。LINEもなかった。今、このような“事件”が起きればその情報は素早く出回って大騒ぎになり、ライブ動画などが続々とネット上を駆け巡るだろう。筆者はこれが「ソロアーティスト・稲葉浩志」を象徴する最大の出来事だったと考えている。自由度を利かせながら実験的なものもまじえて活動できるのが、 B’zとソロの大きな違いではないか。

■稲葉浩志のソロとB’zでの表現の違いとは

 ソロの作風として最大の魅力であり、またB’zと異なる点として挙げられるのは「センチメンタリズム」である。

 B’zはスタジアム級のユニットとして、演奏面だけではなく楽曲の世界観も非常にダイナミックである。たとえば「ギリギリchop」(1999年)、「ultra soul」(2001年)は間違いなくソロでは成立しないだろう。B’zの楽曲は、タイトルや歌詞のワードセンス、そしてサビに向かって突っ走っていくメロディと沸き立ち方など、すべてにおいてスケールが大きい。観客が大勢であればあるほど盛り上がれるように作られている。そしてなによりカタルシスに満ちあふれている。

 一方で稲葉のソロ楽曲は内面的な部分が濃く感じられる。それはシンプルに、B’zでは作曲をギタリストの松本孝弘がつとめていることに対し、ソロではサウンド面も稲葉が手がけていたり、アレンジを担当しているからだろう。楽曲の方向性などトータルで「稲葉浩志ワーク」であることが要因として考えられる。

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