後半に入ってもマドリーペースで、ソシエダは何度かゴールを脅かされた。そんな中で迎えた55分、イマノル・アルグアシル監督が動く。メンデスとミケル・オヤルサバルの2人を下げてパブロ・マリン、ロベルト・ナバーロを入れ、フォーメーションを4-3-3(守備時4-4-2)に変更した。
これで少し試合の流れが変わり、ソシエダにも再びチャンスが回ってくるようになった。相変わらず個のクオリティーが高いマドリーの攻撃は脅威だったが、GKアレックス・レミロのビッグセーブや最終ラインに並んだ4人の粘りでなんとか失点を免れ、0-0のまま試合終了のホイッスルを迎えた。
ソシエダは90分間で実に20本ものシュートを浴びた。その中で得た勝ち点1は、勝ち点3と同じくらいの価値があると言っていいだろう。この日はソシエダ守備陣の“粘り勝ち”といったところだろうか。
もちろん攻撃陣も奮闘した。支配率38.6%と自分たちのスタイルを存分に発揮できなかった中でもシュート数8本、枠内シュート3本を記録したのは評価できるポイントだ。
とくに、久保の働きは素晴らしかった。
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●古巣に成長した姿を見せた久保建英
シルバ、メリーノという不動の主力が不在。さらにオヤルサバルやコパ・デル・レイ準々決勝のバルセロナ戦で退場したメンデスのコンディションも今ひとつの中、ソシエダの決定機はほぼ久保から生まれたと言っても過言ではなかった。
久保はトップ下で先発。マドリーのアンカーを務めたトニ・クロースとうまく距離を取りながら味方のサポートに入り、ボールの動きを止めなかった。
後半途中に右サイドへと移ってからは、よりゴール前で存在感を発揮するように。61分には股抜きシュートからGKティボー・クルトワを脅かし、68分には相手SBとCBの間のスペースを巧みに突いてクルトワとの1対1を迎えた。
さらに70分にはカマヴィンガをかわしてボックス内に侵入。最後はグラウンダーのクロスからナバーロのフィニッシュを演出している。少しオープンな展開になりつつあった中で、久保の仕掛けやアイデアはマドリー守備陣の脅威となっていた。
守備でも首を振り、味方に指示を出しながらよくプレッシャーをかけていた。とくに疲れの出てくる後半、相手はカマヴィンガとヴィニシウス・ジュニオールという骨の折れるような2人だったが、粘り強く戦う姿は印象的だった。走行距離が11km超だったことからも、その働きぶりがよくわかる。マジョルカ初期時代からは考えられなかった。
この日唯一の反省点は64分だろう。自陣で判断を迷いカマヴィンガにボールを奪われ、そのカバーに入ったアリツ・エルストンドがカマヴィンガとの衝突でプレー続行不可能になってしまった。スタッフに抱えられてピッチを後にした姿からも軽傷でないことは確かで、久保にとっては少し悔やまれる結果だ。
ただ、総じて久保の90分間は贔屓目なしに称賛されるべきだろう。ゴールやアシストという目にみえる結果は残せなかったが、カルロ・アンチェロッティ監督、かつてのチームメイト、そして古巣のサポーターに大きく成長した姿をみせることができたと言っていい。同じく古巣のバルセロナ戦に引き続き、爪痕を残した。
(文:小澤祐作)