
年金の受給を繰り下げると、繰り下げた期間に応じて年金額が増額されます。では、夫婦で繰り下げた場合、何かしらのデメリットはあるのでしょうか。注意点を見ていきます。※本連載はエスカルゴムック『あなたの年金 トクするもらい方 2023』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、再編集したものです。
夫婦で年金を繰り下げて、損することはありますか?
◆扶養家族がいる人が受け取れる年金がある
厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人が、65歳で老齢厚生年金の受給を開始した時に、扶養している65歳未満の配偶者がいると、その配偶者が65歳になるまで、「加給年金」を受け取ることができます。
受給できる金額は、年間22万3,800円で、配偶者の生年月日に応じて3万3,000~16万5,100円の特別加算がプラスされます。加給年金は、扶養している配偶者が65歳になると、支給停止になります。
その代わり、配偶者が1966年4月1日以前生まれだと、65歳から「振替加算」一生涯受け取れます。
◆繰り下げにより受け取れなくなる
加給年金と振替加算は、繰り下げ受給と密接な関係があります。その理由は、年金を受給していないと受け取れなくなるからです。
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図表1は、夫65歳・妻60歳の夫婦が、2人とも70歳まで年金を繰り下げた場合、加給年金と振替加算の受給がどう変化するのかです。夫が70歳まで年金を繰り下げると、妻は65歳になるため5年分の加給年金、約194.5万円を全額受給できなくなり、その分を繰り下げ増額分でまかなおうとすると約2年8カ月かかります。
妻の場合は、5年分の振替加算、約7.5万円を受給できませんが、繰り下げ増額分3カ月で取り戻すことができます。
また、振替加算は繰り下げ受給開始後、一生涯受け取れます。
《繰り下げで「加給年金」と「振替加算」の受給はどう変わる?》
年金を繰り下げすると、加給年金・振替加算は受け取れなくなります。振替加算は受給額が少なく、一生涯受け取れるため、繰り下げ期間中受け取れなくても受給額への影響は比較的少なく済みます。
★夫:昭和32年(1957年)6月生まれ(65歳)