3年契約の1年目を終えたシーズン終了後、山口寿一オーナーに進退伺を提出していたことが明らかになった原監督は「プロ野球の監督には複数年契約などあってなきようなもの」と発言。山口オーナーも「契約は契約ですけど、勝負の世界でもあります。契約を優先して大事なことの全てが決まっていくわけではない」と話していて。今季も優勝を逃せば退任は避けられない状況だ。
そうなると、3年ぶりの優勝を狙えるかどうかとは別に、シーズン中から焦点となるのが「ポスト原」になる。
「監督という仕事は自分がなりたいと思ったところでなれるものではない。ただ、望まれた時には『いつでも行くぜ』という状態でないといけないんですね」
1月10日に国際武道大で行なわれた特別講義での原監督の発言だ。
“ポスト原”候補の1番手として挙げられるのが、今季から一軍ヘッド兼バッテリー担当に昇格した阿部慎之助コーチ(43)だ。2019年の現役引退直後に二軍監督に就任し、21年シーズン最終盤に一軍作戦コーチに配置転換されると、昨季は作戦兼ディフェンスチーフコーチに昇格。守備部門のトップを任された。
原監督は阿部コーチの現役時代から「このチームは慎之助のチーム」と公言し、まとめ役を任せていた。4年前の寝耳に水と思われた現役引退も、原監督が最も信頼のおける人材を後継者として長期計画で育成してきたからこそともいえる。
だが、昨季は元木大介ヘッド兼オフェンスチーフコーチ(現作戦兼内野守備コーチ)、桑田真澄投手チーフコーチ(現ファーム総監督)とともに、3人のチーフコーチが併存する形だった。そもそも、阿部コーチの引退と二軍監督就任は、19年に発足した第3次原政権が3年契約の満了とともに終了することを見越したものだったはずだ。
21年に日本一奪回どころかリーグ3連覇を逃したにもかかわらず、原監督が3年契約を延長した背景には阿部コーチが球団の設定する一軍監督の水準に達していなかったことが関係している。
というのも、阿部コーチは二軍監督時には若手選手へのパワハラまがいの言動が週刊誌で報じられるなど、本社筋はその資質に疑問符を抱いているとも言われるからだ。22年からの3年間は、次期監督候補1番手に猶予を与えるとともに、他の候補の見定めも進められている。 では、阿部コーチ以外の候補は誰がいるのか。
阿部コーチとともに昨年の“3トップ”だった桑田氏は投手起用の方針を巡って原監督との対立が半ば公然となって一軍から遠ざけられ、ヘッドから降格させられた元木氏も禅譲の対象から後退した。
巨人の不文律として、「監督は生え抜きの4番打者か、エースピッチャーの経験者」とされる。阿部氏以外で最も可能性が高いのは高橋由伸前監督の再登板か。
15年の第2次原政権の退陣とともに、現役続行を決めていた高橋氏に引導を渡した原監督が再び高橋氏に、その座を譲るのは十分にあり得そうだ。急な監督就任を余儀なくされ、十分な準備期間を与えられなかった高橋氏も4年間の評論家生活で充電は十分だろう。
二岡智宏二軍監督も候補に挙がる。高橋政権時に一軍打撃コーチとして、それまでの3年間で本塁打1本だった岡本和真を主砲として大成させた実績があるからだ。しかし、現役時代の晩年に日本ハムに移籍していることがどう評価されるのか。
「永遠の本命」と目される松井秀喜氏への待望論は根強いが、ニューヨークでの生活を投げうってまで巨人軍監督という激務を選択するのかという疑問は消えない。
いずれの候補も決め手に欠ける状況ではあるが、今季限りで原監督がユニフォームを脱ぐ可能性がある限り、時間的な猶予はさほど長くはない。現状では01年オフに長嶋茂雄監督から当時の原ヘッドが政権を引き継いだように、阿部ヘッドが次期監督への最短距離にいることは間違いないようだ。
構成●SLUGGER編集部
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