■気高く生きた人なのだろうと思っています
――「どうする家康」におけるお市を、どのような人物として捉えていますか?
今回演じるにあたって、市について映像や史料で勉強しましたが、若いうちに二度も結婚しますし、はじめは家や時代にほん弄された人なのかなという印象を受けました。でも、古沢さんの脚本を読み込む中で、ほん弄されたというより、強い意思を持って、家系の存続のために何ができるかを考え続けた人なのだと印象が変わりました。
流れに身を任せるのではなく、物心ついた時から、織田家のために何ができるかを考えてきたのだろうなと。それからは、役が掴みやすくなりました。もし男で産まれたら、自分も戦力になりたいと思っただろうなという強さ、戦う気持ちを持っていて。織田家の一員であることに誇りを持ち、自分なりに家や兄に尽くしたいと考え、気高く生きた人なのだろうと思っています。
■全く異なる感覚をもったところに引かれたのだろうと
――市が思いを寄せる家康(元康)についてお聞かせください。
初めて脚本を読んだ時は、身近に完璧な兄がいながら、なぜ市は家康に惹かれたのだろうと疑問に思いました。でも、幼い頃、川で溺れた市を助けてくれたシーンでも分かるように、家康には身分や家は関係なく市を気にかけてくれる、誰にでも分け隔てのない優しさや、自分を偽らないピュアな真っすぐさがあります。寝返り、裏切り合いの戦国時代の中ですし、特に織田家は「勝つか負けるか」「0か100か」という価値観。そんな中、全く異なる感覚をもったところに引かれたのだろうと今は思っています。
■信長姿の岡田さんと初めて現場でお会いした時、ぞくっとしました(笑)
――市にとっての信長の存在とは?
信長の妹ではありますが、この作品では弟のような感覚があります。どんなに頑張ってもかなわない。けれど、「自分もこんな人になりたい」と尊敬して、背中を追い続けてきたのではないかと思います。岡田さんが演じる信長は絶対的王者感があって、「この人には逆らえない」という圧倒的なオーラがあります。血を分けた兄ではあっても、何を言い出すのか分からない怖さはあったでしょうけれど、市にとってはずっと憧れだったのだろうと思います。
今回、岡田さんとは初共演です。信長姿の岡田さんと初めて現場でお会いした時、ぞくっとしました(笑)。最初のリハーサルでは、緊張からかおなかから声が出せなかったのを覚えています。でも、市はそんな信長とも長年付き合ってきたのだな…と思って。岡田さんがいてくださることで、市としてもより一層強い気持ちでいようと思えるし、私自身としても「どうする家康」に出演されている偉大な先輩方とも堂々とお芝居していこうと、改めて自分を奮い立たせることができています。