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『ブラッシュアップライフ』細部にこだわった演出の妙 続きが気になる仕掛けを紐解く

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『ブラッシュアップライフ』©︎日本テレビ

 「今日、もう少し早く起きれば」という直近のものや「学生時代、もっと勉強しておくんだった」というような過去の後悔まで、「あの時、ああしていれば」という思いは誰だって多少なりとも抱くもの。現在放送中の『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)は、主人公の麻美(安藤サクラ)の姿を借りながら、そんな思いを少しだけ、ちょっとおもしろく昇華できるドラマだ。

参考:『ブラッシュアップライフ』第3話にて怒涛の伏線回収 “玲奈ちゃん”黒木華のカッコ良さも

 まず、感心するのが麻美の冷静さだ。もし、「今の記憶を保ったまま、人生をやり直せます」と言われたら、「ラッキー!」と舞い上がったりうっかりしたりして、乳児期のうちに言葉を喋ってしまいそうだ。でも、麻美は、やり直せて嬉しい気持ちはありながらも、“徳”を積むために、着実に2周目の人生を歩んでいく。

 たとえば麻美は、玲奈ちゃんのパパと保育園の先生の不倫を阻止しようと自宅の電話から玲奈ちゃんパパのポケベルへメッセージを残そうとするが、ここでふと「電話番号は通知されないのか?」と思いとどまるのだ。現代で主流となっているスマートフォンのことを考えてのことだろう。深夜のテンションや「これで“徳”が積めるぞ!」の興奮も抑えての冷静な判断だ。気がついてはっとし、“無”の表情で受話器を置く、保育園児・麻美(永尾柚乃)の表情も絶妙だ。淡々と今の状況をしっかりと把握、分析する安藤のナレーションと保育園児としては大人びた表情を見せる永尾の演技は、まさに“人生2周目”を感じさせ、笑いが込み上げてきてしまう。

 そんな中でも麻美本来の性格である、のほほんとしたところは健在。自宅からではなく、公衆電話からポケベルへメッセージを送ろうと決めた麻美は、公衆電話の場所を、人生1周目での妹・遥(志田未来)との会話で思い出す。また、中学時代には、恨み言を言っていたにもかかわらず、1周目と同じくゲームボーイアドバンスを三田(鈴木浩介)に没収されてしまう。その変わらない麻美っぽさもまた笑えてしまうところである。

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 細かいところにしっかりとこだわっているのも今作の特徴だろう。人生2周目の麻美は、ついに1周目の麻美が事故に遭ってしまったその日を迎える。記憶どおり麻美、夏希(夏帆)、美穂(木南晴夏)の仲良し3人組で、美穂の誕生日会を兼ねて、楽しくご飯を食べていたその場面にふと違和感を覚えた。麻美の服装が1周目より明るくなっている気がしたのだ。1周目の3人は、皆、ブラウンを基調とした服装をしていた。その姿は、いかにも地元で暮らしながら、ゆるーい人生を謳歌している30代という感じだったのだが、2周目で市役所勤めから薬剤師になった麻美は、白っぽいベージュを基調とした服装をしている。ベージュもベーシックな色ではあるのだが、1周目と比べると、こんなところも“ブラッシュアップ”していたのだ。

 確認のためにあとで第1話を見直そうと思っていたところ、同じ場面での1周目と2周目の比較映像が映し出された。あまりのタイミングの良さに驚いたのだが、なんと2周目で偶然声をかけてきた玲奈(黒木華)は、1周目でも同じ店にちゃんといたこともわかった。こうなると、今後、何か伏線になるようなところを見逃していないか確認したくなってしまう。

 そして、今作はゆるい日常を描いたドラマであるにもかかわらず、描かれるキャラクターがとても個性的であることも魅力だ。たとえば、2周目の麻美によって人生が変わった玲奈は、自分が、付き合っていた宮岡(野間口徹)の不倫相手と知った際、かわいらしい外見からは想像もつかないような強い口調で「てめぇ、結婚してんじゃねぇかよ!」と言い放った。と思いきや、すぐかわいい声で麻美たちに「なんか、ごめんね」と謝る。この切り替えの早さといい、ギャップの魅せ方といい、この一場面に黒木の演技力や魅力がぎゅっと凝縮されているように感じた。第3話では、麻美がテレビドラマの撮影の様子を見ながら、「前野朋哉……?」と呟いていたが、前野は今後、『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)撮影中の前野朋哉役という不思議な役で再び出演するとのこと。すでに個性的な前野の役どころがどんなものとなるのか、これから期待が高まる。

 「私の知らない未来がくる」と喜んでいた麻美だが、その未来は短く、なんとすぐに人生3周目に突入することに。1周目から2周目にかけては、堅実にブラッシュアップした印象だったが、麻美は、今度はテレビ局員になるようだ。どうしてそうなったのかがとても気になる。早く麻美の“次の人生”が観てみたくなっている。(久保田ひかる)

 
   

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