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“藤原竜也”というジャンルを成り立たせる説得力 鮮烈なデビューから『Get Ready!』まで

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『Get Ready!』©︎TBS

 その伝説的舞台を観たのは、もう25年前のことだ。その衝撃は、今でも鮮明に思い出せる。

参考:『カイジ』シリーズが見せた日本映画としての可能性 藤原竜也のテンション高い演技の凄まじさ

 1997年に蜷川幸雄の演出により再演された、寺山修司作『身毒丸』。亡くなった母を求め続ける身毒丸と母を売る店で買われた義理の母・撫子が、“家”という呪縛の中で繰り広げる壮絶な愛憎劇を描いた舞台だ。オーディションで5537人から勝ち残り、身毒丸役に抜擢されたのが、その年15歳になる藤原竜也だった。

 舞台全体に漂う妖しげな雰囲気。撫子役・白石加代子の鬼気迫る演技。白石と全身全霊で対峙する藤原の熱量。15歳、デビュー作だからこそ醸し出せるピュアな美しさ。「お母さん、もう一度ぼくを妊娠してください」と身毒丸が懇願するセンセーショナルなラストシーンとともに、えもいわれぬ強い狂気が体に刻み込まれた。

 藤原は『身毒丸』以降も、爽やかなルックスとは裏腹に、過酷な環境下で悶え苦しむ役を多く演じてきた。デビューから3年後に主演を務めた映画『バトル・ロワイアル』ではクラスメイトと殺し合うことを余儀なくされ、『カイジ 人生逆転ゲーム』では借金返済のために命と人生を賭けた。『デスノート』では、名前を書き込まれた人間に死をもたらすことができる“デスノート”を使って、次々と犯罪者を殺すエリート大学生を怪演。難役に凄まじい熱量で挑み、「天才」「怪優」の名をほしいままにしてきた。

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 ただそれも、俳優としての出自を考えれば、自然なことのように思える。『身毒丸』を一度観ただけの私ですら、トラウマになるほどの影響を受けたのだ。15歳という多感な時期に、しかも演劇経験が皆無の少年が、蜷川の過酷な演技指導を受け、海外公演でデビューというプレッシャーを乗り越えた。その原体験は役者人生を決定づけるほど大きなものだったに違いない。

 近年も、殺人犯、ダメ人間、事件に巻き込まれる人と、特異なキャラクターを熱演して話題を呼んだ。『藁の楯 わらのたて』、『ST 赤と白の捜査ファイル』、『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』、『鳩の撃退法』、『ノイズ』など挙げればキリがない。特に『藁の楯 わらのたて』で演じた、幼女を惨殺した凶悪犯・清丸国秀のサイコパスぶりは背筋が凍る不気味さだった。

 藤原の出演作は小説・漫画の実写化が多い。原作ものは思い入れの強いファンからの批判を受けやすいものだが、藤原が演じるキャラクターはどれも高評価を得ている。「夜神月は藤原竜也じゃない」「カイジは藤原竜也じゃない」と公開前は懐疑的な声があっても、作品を観た観客が「この役は、藤原竜也以外ありえない」と思ってしまう説得力がある。

 藤原の役作りは、いわゆる憑依型とは違う。例えば、『デスノート』で藤原扮する夜神月と熾烈な頭脳戦を繰り広げるL役を演じた松山ケンイチは、風貌、姿勢、細かな仕草まで完コピして絶賛された。一方の藤原は、原作に寄せるのではなく、役の特徴を取り込んで昇華させる“ストロングスタイル”。モノマネされるような強烈なインパクトを残しながら、その世界に本当に存在しているかのように自然なキャラクターを作り上げる。

 2022年『ノイズ』で再タッグを組んだ際、松山は「やっぱり竜也さんって、昔から他の俳優さんとちょっと違うところがあるんですよね。(中略)その違いをみんな分かっているから、『藤原竜也』というジャンルが出来上がったと思うんですよ。TSUTAYAのレンタルコーナーとかで、『アクション』、『コメディ』、『シリアス』、『藤原竜也』みたいな(笑)」と絶賛した。(※)

 2022年秋は舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に父となったハリー・ポッターとして出演するなど、常に演技の幅を広げ、我々の想像を超えてくる藤原。現在放送中のTBS日曜劇場『Get Ready!』では、天才執刀医のエース・波佐間永介(妻夫木聡)が率いる闇医者チームの交渉役・下山田譲に扮している。表の顔は優秀な国際弁護士という役どころで、第3話までの時点ではドラマの中で最もまともな人物のように見える。エース、凄腕オペナースのクイーン(松下奈緒)と若き万能ハッカーのスペード(日向亘)と、クセもの揃いのメンバーに振り回されるさまは、まるで『ST 赤と白の捜査ファイル』で変人揃いのSTを統括するキャップ・百合根友久警部(岡田将生)のようだ。

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