top_line

【スマートフォンアプリ(Android/iOS)配信終了のお知らせ】

“相互理解の場となる修復的司法”、“日本社会で対話が可能か?”──「対峙」をめぐる金平茂紀(ジャーナリスト)× 坂上香(ドキュメンタリー映画監督)のトークイベント開催

キネマ旬報WEB

 

銃乱射事件の被害者家族と加害者家族による緊迫の対話を描き、世界中の賞レースで81部門ノミネート・43部門受賞(※2022年11月14日時点)を果たしている「対峙」が、2月10日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかで全国公開。ジャーナリストの金平茂紀氏と「プリズン・サークル」などで知られるドキュメンタリー映画監督の坂上香氏が同作を語り合ったトークイベント(1月25日、東京・渋谷のユーロライブにて)のレポートが到着した。

 

 

まずは坂上香監督が「今、周りの人が鼻をすすらせながら観ていました。私も何度も観ていますが今回もグッときてしまいました」、金平茂紀氏が「この映画には全く登場しなかった、おそらく登場人物たちを追い込み、ひどい目に遭わせてきたであろうマスメディアのTVという場所で46年間色々な事件や出来事を扱ってきました。そういう人間として何を感じ、考えればいいのか…何かお役に立てることをお話できればと思います」と挨拶。

広告の後にも続きます

続いて坂上監督が「最初に映画のご案内をいただいた時に“また銃乱射事件についての映画か”と思ってしまったんです。他の多くの映画ではセンセーショナルな銃乱射の場面や銃の問題、なぜ子どもたちが銃を乱射したのかという“10代の闇”みたいなものが多くて食傷気味でもありました。でも、アン・ダウド(事件加害者の母親リンダ役)のTVドラマシリーズ『ハンドメイズ・テイル 侍女の物語』での演技がすごく好きで、映画を観ることにしたんです(笑)。この映画は、加害者の両親、被害者の両親という2組とも自分たちが愛していた息子を失った埋め合わせのできない喪失を抱えていて、私は完全に親の立場として観ていました。特にリンダとゲイル(被害者の母親)にものすごく共感して、心に触れたんです」と述べた。

金平氏は「この映画を観たのは今日で2回目ですが、スクリーンで観てよかったと思いました。最初はPCで観たんですが、全然違いますね。この映画では密室劇として、本当に良質な舞台のように描かれているんです。全く息をつけないほどの緊張感が漂っています。大きな画面で観て初めて気づいたんですが、荒野の柵にぽつんと付けられた赤いテープが時間の経過も含めて本当に効果的でした」と感想を語り、「映画に出てくる罪の告白をせざるを得ないような“対話”が成り立っている社会と比較して、この日本社会においてそういう“対話”が可能なのかということを考えながら観ていました」とわが国への懸念も示す。

 

▲金平茂紀氏

 

本作はアメリカやヨーロッパで制度化されている“修復的司法”(犯罪を社会における“損害”と捉え、加害者と被害者と地域コミュニティという3者による対話を通して解決策を探ろうとする考え方)を扱っている。坂上監督は1996年にアメリカで修復的司法の実践のための旅を取材し、TVドキュメンタリー『ジャーニー・オブ・ホープ~死刑囚の家族と被害者遺族の2週間~』(1997年文化庁芸術祭優秀作品賞/日曜スペシャル【NHK-BS1】)や書籍『癒しと和解への旅―犯罪被害者と死刑囚の家族たち』を発表するなど、長年このテーマに強い関心を寄せてきた。

  • 1
  • 2
 
   

ランキング(映画)

ジャンル