

「このマンガがすごい!(オンナ編)」で史上初の2作連続1位に輝いた岩本ナオの同名コミックを、アニメ制作会社マッドハウスが映画化。本作で長篇劇場作品デビューを飾り、原作を心から愛する渡邉こと乃が監督を、ドラマ『コウノドリ』でエモーショナルな感動を描いてみせた坪田文が脚本を担当。現在、映画やドラマに引っ張りだこの賀来賢人と浜辺美波が主人公の二人に命を吹き込み、最高純度の感涙アニメーションを作り上げた。
長い間、些細なことで争い続け、国交を断絶してきたアルハミト国とバイカリ国。仲裁に入った神様は、2つの国の長に告げる。「国で〝一番美しい娘〞と〝一番賢い若者〞を送り合って縁組をするように」と――。お調子者の建築士ナランバヤル(賀来)と、食べることが大好きな第93王女サーラ(浜辺)は、国の未来のために〝夫婦役〞を演じることになるが……。

物語の発端はいわば〝政略結婚〞だが、本作の面白さは当の本人たちがそれとは全く別の場所で出会うところにある。相手の誠実さや優しさに触れ、地位や外見ではなく内面に強く惹かれていく、純粋な愛。また、物語は大人(親)の選択が子どもたちの未来に直結する重要性も秘めている。自分より他者を考え行動することで、何かを変えることができるかもしれない。ひとつの決断が起こした波紋がバタフライ効果のように拡がり、やがて大きな力になるかもしれない。世界が争いに揺れる現代にこそより響くメッセージが、確かに感じられる。多様性のある社会について考え、争いではなく人と人とのふれあいと対話を通して未来への希望を育むことの大切さ。本作が、次世代の人々がそんな未来を考えるきっかけになることを願ってやまない。
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文=原真利子 制作=キネマ旬報社
(キネマ旬報2023年1月上・下旬合併号より転載)