ラフィは予想通り「残業は契約外だから」という返事。力を貸してくれるかもと期待していたベスには、デートがあるからと断られました。一緒に働く職員がこんなに非協力的でいいのかと憤慨したところで、どうすることもできません。
最後の望みはトニーです。涙を流す勢いで頼む私に同情したのでしょう。時間の制限はありましたが、作業を手伝ってくれることになりました。これをきっかけに信頼関係を築きはじめたトニーと私。のちに彼は、誰よりも私を助けてくれる存在となるのです。
運動会は大成功! 保護者の言葉で今までの苦労が吹っ飛ぶ
運動会当日は快晴。早朝6時から園庭を万国旗で飾り、苦心作の看板で門に装飾を施しました。園児にプレゼントする大きな風船は100個も膨らまさなければなりません。音響を確認しマイクを調整。受付の準備を終えると、開会時間ギリギリでした。
ちょっと恥ずかしそうに登園してくる園児たち。例の帽子を頭に乗せて、教室で待機しています。ファンファーレが鳴りいよいよ入場の瞬間。1人目がトラックに入ると、保護者席から一斉に「わー」「可愛い」という声が上がりました。帽子についての感想も聞こえてきます。その声でこれまでの疲れが一気に吹き飛び、涙が溢れてきました。頑張って良かったと心の底から思ったものです。
心配していたパラバルーンもダンスも見事に披露できました。最後に残すのは、保護者と職員対抗のリレーのみ。あまりに狭いトラックで華麗な転倒を見せた私ですが、痛みを感じないほど高揚していたのだと思います。翌日には立派なアザになっていました。あれほど準備に時間をかけた運動会も、あっという間に終了です。日曜日だったので、外国人先生はすぐに退勤ですね。一瞬イラっとしたものの、その日の私は寛大でした。頑張りを認めてもらえたのが、本当に嬉しかったのです。大変なはずの後片付けも、全く苦にならず。その日の出来事を思い返しながら足取り軽く家路に着きました。
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続く
「英検2級の実力しかない私が、20年以上英語教育に携わってきた話」は主人公である高山杏の体験をもとにしたフィクションです。実在の人物、設定は架空のものです。