
※本記事は、夏目ゆきお氏の小説『濡羽色の朝』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
兆し
疑惑
吾郷は疑惑を整理して、自分には何ができるか考えた。
山北開発事業においての疑惑は、
一、佐分利市長と黒岩産業の結託、つまり贈収賄
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二、市有地払い下げ及び開発事業委託での談合
三、市長選におけるグレーで巧妙な事前運動
四、すべてを実行するための裏金作り、つまり不正会計
証拠を見つけるのに、自分の立場で最も手の届きそうなのは談合だ。開発事業関連資料を精査すれば何かが見つかるかもしれない。だが、上司の目があるから簡単ではない。次はNPOを使った事前運動か。月生会の報告書を精査すればヒントはあるかもしれない。
だが、こちらもおそらく閲覧を妨害する何かがあるだろうし、閲覧できたとしても簡単に見破られる証拠を残すような相手ではなさそうだ。壁は厚い。といってこのまま見過ごしては早晩、山北西も払い下げられ、開発の手が入るだろう。その前になんとしても阻止する方法を考えなければ。吾郷は拳で額をとんとん叩いた。
モンスターマザー