■「大奥」とは
よしながふみの同名コミックを森下佳子の脚本でドラマ化した作品。3代将軍・家光の時代から幕末・大政奉還に至るまで、男女が逆転した江戸のパラレルワールドを舞台に、ジェンダー、権力、病など、現代社会が直面する課題を描く。
江戸幕府3代将軍・徳川家光の時代、「赤面(あかづら)疱瘡(ほうそう)」と呼ばれる奇妙な病が日本中に広がっていった。この病は“若い男子にのみ”感染し、感染すれば“数日で死に至る”恐ろしい病であった。対処法も治療法も発見されず、結果として男子の人口は女子の1/4にまで激減し、日本の社会構造は激変した。男子は希少な種馬として育てられ、女子はかつての男子の代わりとして労働力の担い手となり、あらゆる家業が女から女へと受け継がれるようになる。江戸城でも3代将軍・家光以降、将軍職は女子へと引き継がれ、大奥は将軍の威光の証であるがごとく希少な男子を囲い、俗に美男3千人などと称される男の世界が築かれていくのであった。
■有功と家光は若紫と通して距離を近づけていくが…
有功は、家光から渡された猫に「若紫」と名付け、若紫の存在で家光と有功の距離は次第に縮まっていく。一方で、有功の部屋子・玉栄(奥智哉)は有功のことを良く思わない者たちから嫌がらせを受け始めるように。有功もまた玉栄の変わった様子が気がかりになるなか、二人をつなぐ若紫を巻き込んだある事件が起こってしまう…。
■有功は家光の壮絶な過去を知る
姿の見えなかった若紫が死体となって御中臈の角南重郷(田中幸太朗)の部屋の前で見つかる。重郷が若紫を殺したと思った家光は激昂して重郷を斬りつけようとするが、有功がそれを制す。有功は若紫を弔い、家光を諭した。
有功は正勝(眞島秀和)から家光の過去を聞く。死去した父・家光が行きすがりの女性をてごめにしてできた子どもであり、父・家光が死去した際に春日局(斉藤由貴)の計略によって無理矢理男性の身なりをさせられて上様に仕立てられ、大奥から抜け出そうとしたときに事情を知らない者に乱暴されたという壮絶なものだった。それから家光は居丈高になり、人を傷つけるようになったのだった。有功は家光の事情を知って涙を浮かべる。
家光は御中臈に女性の身なりをさせて舞を舞わせる遊びに興じているところに、女性の身なりをした有功が現れる。下がれと言われても家光に歩み寄り、家光と有功を詠んだ歌を差し出す。有功の身なりを似合わないという家光に同意し、装束を家光に優しく着せる。「上様のほうがよほどお似合いにございます。千恵様」と女名を呼んで有功に語りかけられ、家光は涙を流す。家光は声を上げて泣き、有功に抱きついた。
一年後、褥をともにし、睦まじく過ごす家光と有功。しかし、春日局は有功に「この月をもって上様のお褥よりお下がりいただきたい」と言い渡すのだった。
傷ついた者同士である家光と有功が身を寄せ合う姿に胸が締め付けられる。二人が仲睦まじい様子にほっこりと胸がやわらぐが、この後に待ち受ける展開から、またも目が離せないと思わせる今話となった。Twitterでも公式ハッシュタグの「#大奥リアタイ」がトレンド入りを果たした。
◆構成・文=牧島史佳