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テレビ離れの本質は「作り手の勝手な忖度」/元テレビ東京プロデューサー・上出遼平

日刊SPA!

テレビ離れの本質は「作り手の勝手な忖度」/元テレビ東京プロデューサー・上出遼平

 コロナ禍で自粛生活、円安進行で物価高、高齢化に伴う医療費負担の増大……。多くの人が「仕方がない」と受け入れてきた閉塞感は、なぜ解消できないのか? 同調圧力に屈することなく、堂々と「NO」を突きつける気鋭の論客たちが日本の忖度社会を打破する処方せんを提示する。

◆テレビプロデューサー・上出遼平「勝手な忖度、自主規制をしなければ番組は面白くなる」

 テレビがつまらない。そう言われて久しいが、近年では動画配信サービスの普及で「テレビ離れ」が加速している。今年はキー局すべての世帯視聴率が初めて10%を下回った。「それでもテレビの存在価値や面白さは変わらない」と異を唱えるのが元テレビ東京のプロデューサー・上出遼平氏だ。

「テレビ以外のデバイス、コンテンツが増えているので、視聴率の低下は必然です。それをもって『テレビがつまらなくなった』と言うことはできません。ただ近年は番組の制作費が縮小し、スポンサーの意向も無視できない。今のテレビは中高年がメインのターゲット層なので、わかりやすい番組ばかりになっているのが現状です」

◆テレビがつまらなくなったのはコンプラのせいではない

 また、つまらなくなった理由としてよく挙がるのはコンプライアンスの厳しさだが、これについて氏は否定的だ。

「コンプライアンスは、過去のテレビの失敗を基礎に決められている。だから『コンプライアンスを破らないと番組が面白くならない』というのはテレビマンの傲慢。そうした主張はテレビで害されるかもしれない人たちへの想像力が欠如していると思いますね」

◆“テレビ離れ”の本質は作り手の勝手な忖度

 では「テレビ離れ」の本質的な問題は何か。「作り手の勝手な忖度からの自主規制が跋扈している」と氏は続ける。

「キー局は実のところ競争していないので、いいものを作らなくても食いっぱぐれることはない。だからリスクを冒そうとは思わないし、既得権益に依存してきた年配テレビマンたちの悪習ですよ。ぬるま湯の環境では、コンテンツの進歩や面白い番組は生まれません。そういう意味では、『テレビがつまらない』と言われて、視聴者が離れていくのは当然かなと思います」

◆テレ東は勝者になり番組が退屈になった

 息苦しい業界を変えたい。そんな思いでテレ東時代に制作した番組が『ハイパーハードボイルドグルメリポート』。

「音楽やテロップもほとんどなく、世界の危険地帯にカメラひとつで踏み込んで食事シーンを撮影する。初回のオンエア後に上司から呼び出されて『あれはテレビじゃない!』と怒られたりもしました。そのあとに、『家、ついて行ってイイですか?』でパンクバンド・オナニーマシーンのイノマーさんががんで亡くなるまでを撮影した回は反響がすごかった。真摯に向き合えば、テレビの面白さを示すことはできます」

 その後、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』はポッドキャストや書籍化などの展開を見せた。テレビ東京の社員でありながら挑戦を続けてきた上出氏だが、’22年6月に退社したのはなぜか。

「10年間勤務して、学びの場として物足りなさを感じたんです。今はテレビ局時代にはできなかった映像や文章の表現をしています」

◆テレビ離れを食い止めるために必要なこと

 外に出て、さまざまな活動を経たことで、改めてテレビ業界に対して思うことがある。

「東京のキー局は勝者の意識が強いからか、定説から逸脱した番組は生まれにくい。かつてテレビ東京は敗者だったのですが、注目度が上がり勝者としての認識が強くなっている。そのなかで今は地方局が、失敗を恐れることなく番組づくりをしていて面白い。中京テレビの『オモウマい店』は若いスタッフで勢いがある。番組にとって都合よく編集をするのが当たり前の昨今で、番組スタッフと取材対象が一緒にオンエアを観るという関係性はすごいことですよ」

 テレビ離れを食い止めるためには、その「倫理を持った番組づくり」が重要だという。

「今は1回の放送だけじゃなくて、TVerなどで繰り返し観られるので、誰かに魅力を伝えたくなるような番組のクオリティが大切。そこはYouTubeと差別化できる部分で、同じ土俵に立とうとする必要はないと思ってます」

◆テレビ業界の今はブルーオーシャン

 今後テレビはさらに窮地に立たされていくのかと思いきや、「今はブルーオーシャンです」と上出氏は言い切る。

「簡単にいうと、テレビは不意打ちで視聴者を殴りつけることができるんです。視聴者が観たいコンテンツを選択するネット配信ではできません。僕はその本気の殴り合いが楽しいし、最大の魅力だと思ってます。だから、これから映像の道に進みたい若手にとってテレビは可能性に溢れた場所ですよ。周りからつまらないと言われるなかで、面白いものさえ作れば、一気に勝てます」

 業界の風通しをよくすることで、新たな面白さを示すことができたなら、テレビの復権は俄然進みそうだ。

<上出遼平の推し番組3選、だからテレビは面白い!>

◆オモウマい店 (中京テレビ)

 値段の安さやサービスが独特の飲食店を紹介するヒューマングルメンタリー番組。中京テレビが全国ネットのゴールデンタイムで、バラエティ番組を制作するのは14年ぶりとなる

◆5時に夢中! (TOKYO MX)

 ’05年から続く夕方のワイドショー番組。上出氏の妻である大橋未歩が番組アシスタントを務めている。「テレビの自由さがすべて集約されていると思えるほどいい番組です」(上出氏)

◆ゴリパラ見聞録 (テレビ西日本)

 ゴリけんとパラシュート部隊の芸人3人が、依頼者が行きたいところを代わりに旅する珍道中バラエティ。おっさんたちのグダグダ感が人気になり、福岡発祥のローカル番組から全国区へ

【上出遼平】
’89年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、’11年にテレビ東京に入社。’19年に『ハイパーハードボイルドグルメリポート』でギャラクシー賞を受賞。’22年6月に退社し、現在はフリー

取材・文/週刊SPA!編集部 

―[日本の忖度社会にNO!]―

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