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『舞いあがれ!』福原遥&赤楚衛二の演技にみる4年の月日 貴司は舞の道を照らす存在に

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『舞いあがれ!』写真提供=NHK

 資金面を支える悠人(横山裕)と技術面を支える結城(葵揚)。2人のキーパーソンを味方につけ、株式会社IWAKURAは最大の危機を見事に乗り越えた。『舞いあがれ!』(NHK総合)第17週は、それから4年後の2013年夏が舞台となる。

参考:『舞いあがれ!』永作博美を母親役に起用した理由は? 入念な取材によって生まれたリアル

 IWAKURAの工場からゴーッと空を舞いあがる飛行機を見つめる舞(福原遥)。その表情は一瞬だけ曇りかけるも、すぐに晴れやかになる。パイロットにはなれなかったが、亡き父・浩太(高橋克典)の思いは守ることができた。

 あれからIWAKURAの業績は右肩上がりで発注数も増えた。4年前は泣く泣く機械も人も手放さなければならない状況だったが、今は違う。社長のめぐみ(永作博美)はどちらも増やすことを検討しており、取引先の人が言うように会社は絶好調だ。

 もう舞がお手伝いのお嬢さんとして見られることもない。取引先の人に対する理路整然とした提案の仕方や、“お母ちゃん”ではなく“社長”と呼ぶようになっためぐみへの敬語を使った語りかけからも舞の覚悟が伝わってくる。今や、舞は社内外から信頼される営業のエースなのだ。

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 周りに遠慮して、自分の気持ちを言えなかった幼少期があるからなのか。誰よりも思いを伝えることの大切さを知っている舞だからこそ、その言葉には強さがある。人力飛行機や旅客機のパイロットを目指すにあたって、両親やサークルの先輩たちを説得した時、面接官になぜパイロットになりたいかを伝えた時、航空学校をともに卒業できるよう同期たちを鼓舞する時、会社を立て直すためにいろんな人に頭を下げた時……。これまで、舞が周囲に何かを働きかける場面が多々あったが、最終的に誰もがその熱意に心を動かされてきた。

 さすがは「小さなネジの、大きな夢。」という会社のスローガンを創作し、文学青年の貴司(赤楚衛二)に褒められた浩太の娘。無意識に相手の心を動かす力と、自分の言葉に説得力を持たせるためにコツコツ努力できる力は浩太譲りだ。そこにめぐみ譲りの交渉力も合わさり、会社の戦力として大活躍する舞。リストラの対象となり、IWAKURAを去っていったパートのおばちゃんたちも全員が舞の説得により帰ってきた。舞の熱意が伝わったのもあるだろうが、生前の浩太が会社をたとえ一度はクビを切られてもまた働きたいと思える場所にしてくれていたことも大きい。浩太が残してくれたものを舞たちがしっかりと拾い上げながら、家族は今も共に歩みを進めている。

 舞の幼なじみである貴司は、4年前に八木(又吉直樹)から古本屋・デラシネを託された。八木と同じように店の奥にある居間に子供たちに解放し、自分は店番をしながら短歌を作り続けている。舞も何かとこの場所を訪れているようで、子供たちともすっかり顔見知りだ。

〈舞い落ちる 桜の花片乗せたとき オダマキの葉の揺れが止まった〉

 短歌会の芥川賞と呼ばれる「長山短歌賞」への応募を考えている貴司の詩を詠み、舞は「咲いてる桜やなくて、ちっちゃい葉っぱ見てんのが貴司くんって感じやな。人とちゃう(違う)ところ見てる」と褒める。子供の頃、「飼育員をやりたい」という舞の気持ちを代わりに先生に伝えてくれた貴司。思えばそうやって、いつも舞の本当の気持ちを見逃さず、拾い上げてくれていた。

 デラシネは昔も今も変わらず、誰もが安心して好きなことに熱中できる場所。そして、その空気感を作っている貴司は舞にとって目指すべき道を照らしてくれる存在なのではないだろうか。貴司と会話することで、舞は自分が今やりたいことに気づける。

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