
無数のつぶつぶがトライポフォビアを刺激するとか言ってる場合じゃない。なぜなら個体数が減少し絶滅が危惧されている生命が大量に誕生したのだから。
この動画は南米最大のオオヨコクビガメの営巣地で始まった孵化イベントをとらえたもので、推定数十万匹のバースデーだ。
母カメおよそ8万匹の集団産卵のあと、ほぼ同時期に殻から出て川へと向かう子ガメたち。がんばって生き延びてくれよな!
Scientists record world’s largest hatching of baby turtles in South America
その数数十万匹!卵から孵化したオオヨコクビガメの赤ちゃんの群れ
映像はアメリカのニューヨークを拠点とする動物保護組織WCSがとらえたもの。砂の上でわらわらと動く灰色がかった生物の群れ。砂の中の卵から一斉に孵化したばかりの赤ちゃんカメは推定数十万匹。まもなく川を目指して移動するところだ。
オオヨコクビガメの営巣と孵化は、アマゾン盆地西部の砂州で毎年見られる光景だ。ここはブラジルとボリビアの国境にあたる川のそばで、ブラジルではグアポレ川、ボリビアではイテネス川と呼ばれている。
すべてが幼体のみの巨大な群れは、たった1種のカメで形成される集合体としては地球最大といわれている。

8万匹の母カメが産卵。南米で最も巨大なオオヨコクビガメの営巣地
毎年この様子を見守るWCSコロンビアの科学ディレクター、ジャーマン・フォレロ=メディナ氏によると、ここは南米で最も巨大なオオヨコクビガメの営巣地で、世界でも特に重要な場所だという。9月下旬の産卵期になると、推定8万匹の母カメが砂に穴を掘って営巣し産卵する。今年の巣作りは10月初めで、12月中旬には孵化が始まりそれが1月上旬まで続いたそうだ。

カピバラとリラックスするオオヨコクヒガメたち photo by iStock
産卵期に集まり平均70~120個産卵。50日後に子ガメが孵化
オオヨコクビガメ(英名:Arrau turtle, Giant South American river turtles 学名:Podocnemis expansa)は、カメ目ヨコクビガメ科ナンベイヨコクビガメ属のカメだ。ナンベイヨコクビガメ属の最大種とされ、成体は大きなものだと体長(甲長)約1メートル、体重90キロまで育つ。
主な生息地は南米一帯で、主に深い川や湖沼に生息する。水棲種のため産卵時以外に陸に上がることまずないそうだ。
食性は主に植物性で成体は果物や種子、藻類などを食し、繁殖期の雌は産卵のために特定の水辺などに多数集結する。
産卵の際は雌が夜間に深さ70センチほどの穴を掘り、平均70~120個ほどの卵を産む。約50日後に体長5センチほどの子ガメが孵化する。その孵化率は高く80%以上だという。
なお陸で産卵を終えたカメたちはすぐに川に引き返し、赤ちゃんカメがやってくるのを待っているそうだ。

photo by iStock
しかし悲しいことにその時期は一斉に大量の子ガメが水に向かうため、捕食者に狙われやすく、親たちがいる川にたどり着く個体はわずか5%だそうだ。
生き残った個体の寿命はおよそ20年、飼育下では25年といわれるが、生息地で行われた放流追跡調査から80年ほど生きる大きな個体もいると考えられている。
個体は減少傾向。成熟が遅く人間に卵や個体を狩られることも
生息地が広いオオヨコクビガメだが、その数は年々大幅に減少しており生息地の各国で保護活動が始まっている。その理由としてこの種の成熟が遅いことと、野生の捕食者のほかに食用や伝統医療の材料目的で営巣地の卵を盗んだりカメを狩る人間がいること、また環境汚染や洪水を引き起こすダムの影響もある。
オオヨコクビガメはその食性から河川の食物網に大きく貢献している。曲がりくねった川沿いに種子を撒き、植物を再生をうながす重要な生態学的役割を担っているのだ。
国境の営巣地を保護して大規模繁殖を守る案も
一方、ブラジルとボリビアの国境で毎年のように起きる大規模繁殖を守るには、両国の調整が重要だとして一帯を保護地域にすべきという声もあるそうだ。
WCSは現在ドローンなどを利用して個体数を推し量っているが、AIの自動カウントも検討しているそうだ。
人間が決めた国境などスルーで繁殖するオオヨコクビガメ。この壮大なシーンがこれからも続きますように。
References: youtube / wsazなど /written by D/ edited by parumo