
ある日突然眠りに落ちて夢の世界で生きることになってしまったよりか。夢の世界で生きる少女たちは自分の領地である「夢のお城」を守り抜くことによって生き延びることができるが、お城を失ってしまうと辛い現実に戻されてしまう。領地争いが続く中、よりかだけは争いを避け他の少女と仲良くしようと試みるが……。※本記事は、ちょちょいのよったろー氏の小説『ユメミテ ゆめみめ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
【前回の記事を読む】【小説】母から眠り続ける娘へ…「貴女は私達の愛する子よ。だから、目を覚まして」
第三章【よりか】の居ない世界
その頃病院では、手術と手術の合間に調べ物をしている【医師】が居た。【よりか】の父親である。
看護師が、「また、調べ物ですか、【盾舞先生】。少しはお休みになられませんと」と気遣う。
【父親】は、「ん? あぁ。そうか、わかった。だけど、もう少しだけ」と答えた。
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「【先生】に倒れられたら病院としても困ります。本当に休んでくださいね」
「あぁ、じゃあ、少しだけ休むよ。コーヒーでもいただくか」
「あの、娘さんの事ですか?」
「ん、まぁ、そんなとこだね。どこかに似た症例がないかと思ってね。……親バカと思うかもしれないが、僕と妻の間にはなかなか子供が出来なくてね……。不妊治療の末、やっと産まれた子供なんだ。本当に、可愛くてね。僕の【よりみち】の【より】と妻の【ゆうか】の【か】を合わせて【よりか】と名づけたんだ。これ以上ない、僕と妻の分身……それが、【よりか】だ。
出来る限りの愛情を込めて育てた娘だ。出来る事なら代わってやりたい。だけどそれが出来ないのが悔しくてね。僕は娘を少しでも早く元気に学校に通わせてあげたい。それだけなんだけどね。罰でも当たったかな? なかなか神様は願いを叶えてくれないんだよね」
「そんな事ありません。【先生】はこれまで何人も患者さんを救ってきたじゃないですか。その【先生】が罰だなんて……」