
不器用な気質で、人との距離を感じて学校内で馴染めずにいたレッカ。それでも放課後になると市民病院にいる義姉のせせらぎルナに会いに行くことを楽しみに毎日を過ごしていた。そんなある日、「憑依生命体」という正体不明の狂戦士が現れ、ルナがいる市民病院を襲う。騒乱の中でなんとか彼女の元へ向かうレッカだったが、憑依生命体と対峙した時、「エフェクト」という力が覚醒して――。 ※本記事は、藪坂りーた氏の小説『俺たちのアビリティフォース』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
『非現実の幕開け』
夕方の17時半頃だろうか。久禮市にある唯一の大学、「久禮総合経済大学」のとある空き部屋にて、男性4人と女性3人の計7名が集っていた。
自前のパソコンでネットゲームに勤しむ者。
机の上に学校の教材を並べ、執拗に勉学に励む者。
残りの数人とワイワイ騒ぐ者。
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皆、思い思いに過ごしていた。
「……!」
不意に先程ネットゲームに勤しんでいた男子高校生が、目の前のPCからの「ピーピー!」という警報音に手を止める。その警報音は広大なこの空き教室の全体に響き渡るほどの高飛車なもので、全メンバーがその音に各々反応する。
「憑依生命体か! 場所は⁉」
先程まで気楽そうにダベっていた薄い金髪の青年が男子学生に確認する。
即座にパソコン画面全体に展開されていたネットゲームのサイトを下部のバーに畳み込み、最小化されていた細部の地域まで的確に作図されている都市の地図を取り出す。彼はそれを一様するように見てから地図の中にある小さな赤いサークル上の目印を発見する。