
気が付いたら毎日飲まずにはいられなくなっているのがお酒の怖いところでもある。気づかぬうちにアルコール依存症となっているケースも少なくない。
アルコールは、脳が委縮し、認知機能を低下させることがこれまでの研究であきらかとなっているが、新たな研究によると、禁酒することで比較的早く改善がみられることが明らかとなった。
アルコール依存症患者を対象とした研究では、ほんの2、3週間禁酒しただけで認知機能が大幅に改善されたという。
記憶力や注意力の欠陥といった認知機能障害が、6割の患者で禁酒から18日以内に正常なレベルまで回復した。短期間だというのに、目覚ましいまでの改善が確認されたとのことだ。
お酒の量をコントロールできなくなる「アルコール依存症」
「アルコール依存症」は、お酒の量を自分でうまくコントロールすることができず、健康を崩したり、社会生活に問題を抱えてしまったりする病気だ。この患者は、アルコールへの耐性ができていることも多く、以前と同じだけ酔うためにもっとたくさんお酒を飲まなければならないこともある。
そのような大量の飲酒は、記憶力が低下するなど、いくつもの認知機能に悪影響を与え、脳自体にも損傷を与えることがある。

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禁酒することでどの程度改善するのか?
禁酒でアルコール依存症の障害が一部回復することは、以前から知られていた。だが、脳の研究と同じように、そのとき起きていることを解明するのは簡単なことではない。禁酒による改善効果をきちんと理解するには、1人の人を長期的に検査して、体に起きる変化を調べる必要がある。
そこで仏パリ=サクレ大学をはじめとする研究チームは、重いアルコール依存症患者32人(うち24人は男性、平均年齢45.5歳)に禁酒してもらい、8日後と18日後に標準的な認知機能テストを受けてもらうという実験を行った。

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禁酒18日で6割の患者の認知機能が正常なレベルに回復
その結果、8日目の時点では患者の6割に何らかの認知機能障害があったが、18日目にはそのうち6割の人が正常レベルにまで回復していることがわかったそうだ。回復した機能は、例えば「記憶力」「発話りゅうちょう性」「文字の並べ替え」といったもの。だが一番顕著だったのは「視空間認識力」で、認知機能障害があった患者の67%が改善していたとのことだ。

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更なる研究で他の要因との関連性を調べる必要
この研究では、18日間という短期間で、禁酒による認知機能改善が確認された。一方、参加者が少ないことや、タバコなど、認知機能に影響する可能性があるほかの要因を考慮していないといった限界もあるとのこと。確かなことはさらに研究を続けて確かめる必要があるようだ。
この研究は『Alcohol and Alcoholism』(2022年10月11日付)に掲載された。
References:Quitting Alcohol Can Improve Cognition In Just 18 Days, Study Finds | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo