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自衛隊で大砲、撃てるかも!音を遮断できる能力、しかし…

幻冬舎ゴールドライフオンライン

意識や時空を操る者、霊能力者、予知能力者…ありとあらゆる異能力者が織りなすエンターテインメント小説。※本記事は、棚小路蔵人氏の小説『異能クラブ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

(参)

聴覚を操ることができる音喪力異能力者、大仏聡(おさらぎさとる)三九歳 建設業

いじめは、相手がその打撃を受けて嫌がり、果ては泣くこともあることから、征服感、優越感、達成感を得るものである。それなのに、このように平然と受け流されては、というか、逆に相手に快感を与えているかのようなリアクションをされては、全く自分たちの快感が得られないばかりか、逆に相手からさげすまれているかのような錯覚まで覚えてしまうこととなるのである。

それで、すぐにいじめも対象から外されることになる。これは後に分かることではあるが、この対応が大仏自身を精神崩壊から護るだけでなく、いじめる者たちへの反撃の効果もあったのである。

いじめる人間は、相手が言いなりになることで優越感を得ていたり、苦しむ姿を見て喜びを得ていたりしたのであるが、大仏はいくらいじめても、何の反応もないため、優越感や喜びを得ることができず、自分たちが無駄にいじめる行為で疲れたり、他人から無能であると笑われているのではないかと思うことにより、逆に、自分たちのストレスを蓄積、増幅させることとなった。

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その結果、その者たち自身の精神崩壊へと導いていたことがある。大仏のこの行為、というか逆に、不作為の態度が、実に、見事な対処であったということである。その意味では、極めて優れた能力であったわけであるが、当時、本人はそれに気づくこともなかった。

そして、この能力がその威力を発揮できたのは、正に、幼少期であり、大人になってからは、もはやいじめを受けることもなくなったし、仮にいじめがあったとしてもこのような対処では解決にはならないため、知らぬ間にその有効期限が切れた能力といえた。

そんな自分の能力の有効性を知らぬままに大人になった大仏だが、大人になって、何か、この能力を使えないかと考えてはいた。そこでまず思い付いたのが大砲の砲撃手である。最近ではミサイルが主流になっているようではあるが、まだまだ大砲も使用されている。これをヘッドホンなしで操作できれば、格好いいのではと思ったのである。

大仏は、自衛隊の制服を着て、巨大な大砲の後ろに立ち、暑いのにヘッドホンまでしてふうふういいながら作業している大勢の部下たちに向かって、発射の号令をしているかっこいい自分の姿を想像した。想像はふくらみ、今度は戦車に乗り、その上部の入り口のハッチを開け、そこから半身を出して、大砲の発射を号令する姿も想像して、うれしくなった。

どんなに大きな音であっても、聞こえないのだから、ヘッドホンもいらないし、自由に動けるのだから、これほどいいことはないだろうと考えたのである。

しかし、大砲の発射音は、火薬の爆発によるもので、音だけでなくその空気圧もものすごいはずで、音だけ遮断しても空気も遮断しない限り、鼓膜が圧力で破れてしまう恐れがあるのではと思われた。だから、ジェット機の発射係なども、みなヘッドホンをしているのではないか、と思われるわけである。

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