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囲碁の基盤にもランクがある!? 最上の材質は「榧(かや)」

幻冬舎ゴールドライフオンライン

本記事は、茶井 幸介氏の書籍『冬の日の幻想』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

【前回の記事を読む】日本人の「囲碁、双六、博打好き」は、奈良朝以前からの伝統

囲碁

江戸時代に入り、幕府は、寺社奉行管轄の下に「碁所」を設け、日海(後に本因坊算砂と改名)を最初の碁所とした。算砂没後、家元制度が確立し、本因坊、井上、林、安井の四家が幕府公認の「官賜棊院」として誕生した。こうして日本の囲碁は、人材に於いても、技量に於いても、江戸時代に開花したと言っても過言ではない。

この隆盛のもとは、何と言っても家康の力によるところが大きい。その家康が碁を覚えたのは、中年になってからだと自らも言っているが、おそらく碁の魅力にとり憑かれた一人だと言ってよい。このような経緯で発展してきた日本の囲碁の現状はどうであろうか。日本の現代のアマチュアの囲碁人口は、約一千万人と言われているが、これはあくまでも推測にしか過ぎない。

周りを見渡しても、碁が打てる人が、男女合わせて約十人に一人もいるとは思われないからである。

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本当は実感として、もっと少ないのではないだろうか。碁というものを知っているということと、実際に打てるということとは全く違う。まだまだ普及の余地がある。一方、プロ棋士は、男女合わせて現在三百数十名おり、新聞碁を中心に覇を競い合っている。賞金を争う各タイトル戦も、大小合わせて二十以上もある。

プロであるからには賞金獲得が大きな目標ではあるが、本来は納得のいった、良い棋譜を残したいというのが棋士達の本心だと聞いている。プロ棋士にとって何が一番嬉しかったかと聞けば、やはり入段(初段になること)した時だと誰もが口を揃えて言う。つまりこれは、プロ棋士として、一人前に認められた最大の喜びであるらしい。

一般的に、自分の仕事を子供にまでさせることを嫌う人が多いが、プロ棋士の場合、自分の子供を同じプロ棋士にしている人が存外いる。自分の仕事に誇りを持っている証拠だろう。また棋士同士、夫婦と言う方も十数組おられるが、もし対局する時があれば、お互い強敵となる。

現在囲碁は、その発祥地と言われている中国のみならず、世界各国でその広がりを見せている。年一回行われる世界選手権戦も、既に十数回を数えるまでになり、年毎に活況を呈している。次は碁を打つための道具のことについて述べるが、次の三つのものが必要である。ご存じの碁盤、碁石、碁ご笥けがそれである。碁盤の材質として最上のものは、何といっても榧(かや)の木である。

他の材質としては、桂、銀杏、桧などもあるが、榧の色つやや、木目の美しさ、絹のようななめらかさ、打った時の石の響きとその弾力性は、どの木材もこれには及ばない。中でも天地柾と言われる本榧の厚さ七寸以上のものになると、その値段で一軒家が買えるほどの高価なものになる。

しかし、最近この榧の木も年々少なくなり、益々希少価値を高めている。何しろ、一本の榧の木が、こうした碁盤を作るに足るだけの巨大な大木に育つためには、優に五百年以上もかかると言われているからである。樹齢五百年の原木を切っても、更に十年以上乾燥させなければ、良い碁盤は作れない。

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