
※本記事は、イジリタツヒコ氏の小説『わしらの街にカープを連れてこい』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
野球馬鹿
「じゃけえ、ここで相談するのはまずいと言うたのに」
祐介が小声で顔をしかめた。そしてカウンターの方を気にしながら、一層声を落として、
「ところで幸太、彼女の窓口に行けたとして、次はどうするつもりじゃ?」
と聞いた。剛史もそれが聞きたかったのだろう、顔を寄せた。
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「正攻法で攻める。直球勝負じゃ。じゃけど彼女の面前で告白するわけにはいかん。他の者に見られんようこっそりとメモを渡す。あとで見てほしいと言うて」
「どういう内容のメモじゃ?」
剛史が聞いた。
「これじゃ。準備はしてきた」
幸太はポケットからメモを取り出した。それはふたつ折りにした、手の中に隠れるような大きさの白い紙だった。祐介が開くと幸太の名刺が挟まっていて、ふたりはメモの文字を目で追った。
《俺と付き合ってください。もしよかったら名刺の裏の携帯番号に連絡をお願いします。迷惑であればこれを破り捨ててください》