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【小説】どこにも行っていないのに…絶えない自分の目撃情報

幻冬舎ゴールドライフオンライン

身に覚えのない自分の目撃情報。それは、姉、母を死に追いやられた妹による復讐の始まりだった。姉と母の自死という衝撃的な出来事をきっかけに復讐を企てる千春と、復讐の対象となるまゆ実、二人の視点によって描かれる復讐劇。第三のオンナとは、果たして誰なのか――謎が解き明かされる度、さらなる衝撃の展開に息をのむ珠玉のミステリー小説。※本記事は、椎名雅史氏の小説『第三のオンナ、』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

第三のオンナ、

まゆ実

「昨日、ヒカリエにいたよね?」

マクロ経済学の講義中、遅れて教室にやってきた亜あ矢やが、そそくさと隣りに座り小声で聞いてきた。

「なんで無視するの? 声かけたのに」

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亜矢は唇を尖らせている。遅ればせながらアヒル口がマイブームだそうで、その表情はアヒルというよりキツツキだが、普段は温厚な彼女が珍しく怒っている。またか……。

「ていうか、いってないんだけど。人違いよ」

「いーや、あれは絶対にまゆ実だった」

顔には出さないが、わたしはうんざりしていた。いったん視線をそらし、どうしたものかと思案する。三年次の春学期が始まってからこの二週間、会った友達から必ずと言っていいほど、昨日どこそこにいたよね? と尋ねられた。どこそこになんかいなかったのに。

「どうして嘘つくの?」

亜矢の瞳の奥がかすかに潤んでいた。

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