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スポーツメンタルコーチに学ぶ、子供のやる気を引き出す質問

パラサポWEB

スポーツの世界では、昭和から令和にかけて大きな価値観の転換が起こった。上からの有無を言わさぬ絶対的な指導よりも、選手の自主性、考える力を伸ばす問いかけが、その才能を引き出せるというものだ。近年、その考え方はスポーツ界だけでなく子どもの教育や、職場の人材育成にも応用されるようになっている。そこで質問によって子どもやスポーツ選手のやる気を高める「しつもんメンタルトレーニング」を主宰し、スポーツ界の全国優勝チームや日本代表チームなどのメンタルコーチをつとめる藤代圭一氏に、子どものやる気を引き出す方法についてお話を伺った。

なぜ「質問」がやる気を引き出すのか?

オンラインで取材に対応してくれた、一般社団法人スポーツリレーションシップ協会代表理事の藤代圭一氏

近年、欧州のサッカー界では、指導者が「教える」ことをやめ、選手が自発的に考え行動できるように「質問をする」「問いかける」といった指導方法に切り替え、成果を出しているという。日本のスポーツ界でも、そうした方法をいち早く取り入れて実績を残しているスポーツチームが多く見受けられるようになった。なぜ、「質問」が選手のやる気を引き出し、自発的に行動を促すのか。取材中、藤代氏が面白い実験をしてくれた。その方法をご紹介するので、ぜひ皆さんも試してみてほしい。

1.今いる場所で上下左右、周囲を見渡してください
2.そこにはいろんなものがありますよね、改めてそれらのものを見てみましょう
3.目を閉じて、そこには赤いものがいくつありましたか?

目を開けたら実験は終了。目を開けたとき、あなたは何をしただろう? 部屋の中に赤いものがいくつあるか、確認したのではないだろうか?

「これが、質問の効果です。今の実験では、目をあけたら赤いものを探してくださいとは言っていません。でも、目を開けたら自然に赤いもの探し始めますよね。なぜかというと質問をされたからです。人は質問をされると、勝手にその答えを探し始めるんです。ですから、どんな質問をするかはとても重要になってきます。いい質問をすれば、子どもは教えなくても問題の解決方法や、アイデアを自発的に探し始めるんです」

質問ではなく尋問をしていないか?

©Shutterstock

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藤代氏によると、子どもに対して多くの親や指導者がしているのは、質問ではなくて尋問なのだそうだ。

「尋問と思える問いの多くは“なんで”という言葉で始まります。子どもの失敗を取り上げて『なんで早起きできないの?』『なんでテストの点が下がってるの?』『なんであそこでパスをしなかったの?』というのは、すべて質問ではなくて尋問です。こうやって聞かれると、子どもたちは大抵の場合『だって●●だったから』と言い訳をします。お父さんもお母さんも、そんな言い訳が聞きたくて『なんで?』と聞いてるわけじゃないはずです。でも、『なんで?』と言われたら大人だって責められている気がしますよね。ですから子どもたちは『なんで?』と言われた時点で怒られていると感じて拒否反応を示してしまうんです」

そして言い訳よりもさらに危険なのが「ごめんなさい」という謝罪の言葉が返ってきた時。両親は謝ってほしいわけではなく、早起きしてほしい、下がったテストの点をどうにかしたい、と思っているだけなのに、子どもがそれを改善しようとするのではなく、謝るようになったら末期症状だと藤代氏。

Why(なんで)ではなくHow(どうすれば)で始まる質問を

©Shutterstock

では、どういう質問をすると、子どものやる気を伸ばし、自発的に課題を解決できるようになるのか?それは「How(どうすれば)」で始まる質問なのだそうだ。

「当たり前のことですが、テストの点数が悪かったことや、サッカーの試合でシュートが入らなかったのは全て過去に起きたことで、それは変えることができません。そんな変えられないことよりも、変えられることにエネルギーを向けた方が健全です。サッカーの指導をしていても『次はどうすればシュートを決められるかな』と問いかけると、子どもたちは自分からアイデアを出してくれます。ちょっと緊張しすぎていたからリラックスしてシュートを打てばよかったかもとか、もっとシュートのバリエーションを増やした方がいいかもしれないというように、自分で考えるようになります。そうなれば、大人が言うことはほとんどなくて、じゃあそういう練習をしてみようとかと、その子が自分で言ったアイデアを行動に移せるようにサポートします。その時にまた失敗するか成功するかわかりませんが、その都度、今度はどうすればもっと良くなるかな? と質問していくと自然に成長のスパイラルに入っていきます」

質問の答えをジャッジしない

©Shutterstock

大人が質問をすることで、子どもたちが自発的に課題解決の方法を導き出せれば理想的だ。しかし、子どもが必ずしも、正しい解決方法を思いつけるとは限らない。大人が想像していたのとは違う方法を提案された時には、どうしたらいいのだろうか?

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