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【ライムスター宇多丸のお悩み相談室423】テレビや配信を観てないため、職場のみんなの話についていけない。手っ取り早く情報を得るにはどうしたらいい?

女子部JAPAN

 

 

宇多丸:その感じで言うと、このあいださ、カフェでお茶してるときに、隣の席の女の子三人組が話してるのが耳に入ってきて。盗み聞きなんかするもんじゃないと思いつつ、けっこうデカい声だったんでつい……(笑)。

とにかく話の流れで、たぶんまぁまぁ有名なYouTuberなのかな?みたいな人の話題になったんですよね。で、三人のなかの一人が、「誰それ? 知らなーい」って言ったんですよ。

そしたら残りの二人が猛然と、「え、うそ、知らないのー? いや絶対知ってるってー!」とか、とにかく「知らないのはおかしい」の大合唱を始めて。

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スマホで画像を見せられてもピンと来てないその子は、「いや、やっぱりあたし知らないわ」って言ってるんだけど、残り二人はそれでもずーっと、「いや知ってるってー! 知らないのおかしいから!」って、不毛な追及を続けるわけ(笑)。

そのやりとりが微笑ましくも、印象に残っておりまして。

僕の感覚だと、人それぞれ知ってること知らないことの範囲なんか違ってて当たり前なんだから、ある事物を知らなかったことそれ自体を延々不思議がられたり責められたりしても意味ないじゃん、とも思っちゃうけども……。

まぁその三人は、いつでも揃って同じものを見て同じように感じているはず、というのが当然のことに感じられるほど、ふだんからよっぽど仲良し、ってことなんでしょうけど。

ヒロさんの職場も、そうしたまさしく同調圧力が、かなり強めな雰囲気だってことですよね……しかもこちらはその三人組と違って、もともと友だちなわけでも仲良しなわけでもまったくないのに!っていう。

この無神経さ、厄介だわー。

 

 

こばなみ:それがもう面倒くさいから、手っ取り早く情報が欲しいってモードになっている感じですね。

そもそも、観てないからやばいとかって言わなくないですか!?と、ちょっと腹立たしさは募ってきますが……。

 

 

宇多丸:もちろん、そんなの余計なお世話だバカヤロウ!っていうのは大前提中の大前提ですけどね。

ただ、いくらこちらの「んなもん人それぞれだろ! ほっといてくれ!」という気持ちのほうが俯瞰的には正論であっても、だからと言ってそれを貫いた結果、職場で孤立してしまうのもキツい、とヒロさんは訴えているわけで。

現実としてこの状況を、いかに比較的こちらが犠牲を払うことなくやり過ごせるか?という、即効性のある戦略もそれなりに考えておく必要がある気がします。

たぶんだけど、部署の人数もそんなに多くなくて、人間関係的に、露骨には逃げづらい距離感だったりもするんじゃない?

たとえば、六人くらいでずっと向き合って仕事しなきゃいけないような感じだと、その場の多数派のルールが、やはり強めにのしかかってきがちだったりもするんじゃないかと。

残りの五人が盛り上がってる共通の話題に乗ってかないと、なんか感じ悪いみたいに見られてしまったり……もちろんそんなの、めちゃくちゃ理不尽な話なんだけどね。

あとは、言いたくもないプライベートな事柄について根掘り葉掘り聞かれて、仕方なく曖昧に対応してたら、なんかツンとしてるとか秘密主義呼ばわりされてしまう、みたいな。

だからおそらく、わりとこれ、あちこちで起きてる普遍的な問題でもある気がしますよ。

繰り返しますが、ハナからそんな押しつけはピシャリとはねつけるような強さがあるならば、それに越したことはないですよ、そりゃ。

お前らに合わせて時間つぶすくらいならぜんぜん一人でいます!って言えるような立場が確保できてるなら、それでまったく問題ない。僕自身も、基本はそういう境地を目指して生きてきましたけど。

ただ現実には、なかなかそこまで振りきったスタンスでもいられないような人のほうが、きっとはるかに多いわけで。

 

こばなみ:じゃあひとまずは、手っ取り早く情報入手、ですかね……?

 

 

 

宇多丸:いかにも多数派に屈するようで、不愉快千万ではありますが……(笑)。

まぁまずはその方向で、考えられるところまで考えてみましょうか。

とりあえず、表面的に話を合わせるだけでいいなら、Yahoo!ニュースの「芸能」のところを一応チェックしとく、とかですかね。

あれ、前夜に放映したドラマのトピックとか、ちょいちょい出てくるじゃん? 「◯◯な展開にネット民悲鳴」みたいな(笑)。

あそこで扱われる級なら、たぶんホントにかなり話題のヤツ、ってことなんだろうからさ。

 

 

こばなみ:あれたしか、6番目くらいから下は、自分がよく調べてる話題のニュースが出てくるんですよね。

私、『鎌倉殿の13人』がたくさん出てくるなぁと思ってたら、自分が『鎌倉殿』についてめちゃくちゃ調べてるからだった(笑)。

なので、みんなの会話の中で出てきたやつとかちょっと調べておけば、いろいろピックアップされて出てくるかもですね。

 

 

宇多丸:だいたいさ、世の少なからぬ人たちだって、同じくそのレベルで「話題の◯◯」に関する情報を、超お手軽に得てたりするんじゃないの?

だからこそ、Yahoo!ニュースなんてものが重宝されてるんでしょうし(笑)。

YouTubeとかまとめサイトの「5分でわかる◯◯」とかだって、要はそうやってカタチだけでも「話題についてゆく」ために利用されてるわけでしょ。

つまり、みなさん意外と涙ぐましい努力をしてるのかもしれないですよ、周囲と話を合わせるために。

でもそれって、時短してるようで実は一番誰得な時間の使い方してるんじゃないの、って気も、おじさんちょっとしてしまいますが……。

その意味では、これはあえてかなり建設的に歩み寄ってみせるパターンと言えるでしょうけど、そんな「みんなが話題にしている◯◯」のなかにも、意外と自分の興味や感性にバチッとハマるものがあるのかもしれない、と考えて、ひとまず素直にトライしてみる、というのもやはり、なかなかバカにしたもんじゃない手だと思うんですよね。

僕自身も、これまで積極的にはあまり知ろうとしてこなかったり、なんなら知った気になっていたようなジャンルに、「アトロク」を通じて改めて触れてみたら一気にどハマり!みたいなこと、昨年だけでもいっぱいありましたから。

それこそ『鎌倉殿』も、大河ドラマを一年通して観るのも超久しぶりだし、三谷幸喜さん脚本というのも特にご自身が監督された映画作品の印象から正直あまり食指がのびないところもあったんですが、火曜パートナー宇垣美里さんの猛ブッシュで観始めたら、まんまと毎週の楽しみになってしまったりもしましたし。

あるいは。今期の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』が最高すぎるので、前からファンではあった井上敏樹さんの脚本なんだけど戦隊シリーズというだけで愚かにも手をつけてこなかった『鳥人戦隊ジェットマン』をこのタイミングでようやく観てみたら、いきなり全話二周するくらい(笑)、本気でオールタイムベスト級の大切な一作になってしまったり、とか。

最近だとやはり『SLAM DUNK』……というか井上雄彦という作家のすさまじいレベルの高さ、知識としてはわかってるつもりでしたけど、実際にきっちり「履修」してみたらやはり、遅まきながら心底感服させられましたし、特に今回の映画版『THE FIRST SLAM DUNK』は、マジでいま観といて良かった!となったわけで。

 

 

こばなみ:私も、めちゃくちゃ遅ればせながら『鬼滅の刃』を観て、なんだかんだハマった(笑)。

 

 

 

宇多丸:そういうことって、どんな時代のどんなジャンルにも、めちゃくちゃあり得るわけじゃないですか。

無論、実際触れてみたらやっぱりピンと来なかったとか好みじゃなかった、というケースだってたくさんあるんだけど……。

それでも、ただの食わず嫌いじゃなくて、ちゃんとホントに接してみたことがあるのとないのとじゃ、自分自身の経験としても人と話すにしても、大違いですから。

なので、たとえば同僚の人たちにも一度、「私、正直あんまりドラマとか観る習慣がないんだけど、ひとつおすすめするならどれ?」って、聞いてみるというのはどうですかね。

もちろんヒロさんの好みもちゃんと伝えつつ……「ちなみに、甘ったるい恋愛モノはNGで!」とか(笑)。

そしたら向こうもきっと、「えーっ、それは難しいなぁ」とか文句言いつつも、いよいよ腕まくりしてきたりもするんじゃない?

 

こばなみ:それはいいですね。Amazonのレコメンド、テレビ版のような!?

 

 

 

宇多丸:で、言われた通り観ましたよアレ、みたいなサイクルができちゃえば、少なくとも話にまったく乗れない状態からはすでに、脱せているわけでしょう。

そこからはもう、ヒロさんの素直な感想でいいと思うんですよね。

仮にそこまではハマらなかったとしても、こういうところが苦手だったけどあそこは良かった、みたいに話してるうちに、だったらヒロさんには前やってたアレが合うかも、とか、そこからまた新たなコミュニケーションが生まれる可能性が、増えるじゃないですか。

単純に自分が知らないコンテンツのレコメンドと考えれば、損はないでしょ。

 

こばなみ:どっちにとってもいい!

 

 

 

宇多丸:まぁ、そもそもその同僚たちが、そこまでフレンドリーにリアクションしてくれるような人たちなのかどうかも、実際はわからないですけどね……。

とりあえず、最も理想的な展開として考えられるのはそんな感じ、ってところですかね。

言うまでもなく、読書や展覧会や真に大事な交際、そしてもちろん睡眠!を優先させてきたこれまでのヒロさんのライフスタイル自体は普通に素晴らしいし、あらゆる意味でケチをつけられる筋合いのもんじゃない。

なので、そこは今後もいっさい譲る必要はないですから。

とはいえ、同僚たちが夢中になってるテレビのドラマとかに関しても、「今期は何が面白いんですか?」「私に合いそうなのあります?」くらいは、こっちも心を開く余地はあるんじゃないかと思うんで。

僕も、門外漢的な分野に関しては、基本的にいつもそんくらいの立ち位置ですよ。

そうこうするうちに、「へー、そこまで言うなら一話だけ観てみようかな」くらいのやつが出てくるかもしれないし、いずれはやっぱり、さっき言ったように本気で感動してしまうようなものに出会えることだって、まぁまぁの確率であるはずで。

そうなりゃもう、オールオッケーじゃない?

やっぱ、どうせ一緒にいなきゃいけない人たちなら、できればネガティブな気分で貴重な時間を浪費するだけじゃなく、そこからこっちのメリットになるようなものを、少しでも引き出したいじゃん? いやらしい言い方をしてしまえば。

その上で、こいつらやっぱアホすぎて話もつまんないしどうでもいいや、としか思えないようなら、その心の声に従って、改めてスーパー適当に受け流してゆけばいいんだし。

相手に歩み寄る気がないという点ではお互い様、フィフティフィフティだね!というふうにも考えられるわけでさ。

そう思えば、ちょっと気が楽になってきたりもしませんかね。

要はとにかく、あくまで自分中心に考えればいい、ってことに変わりはない。

イヤイヤ何かをやったりするのが、なんにしても一番のムダですから!

 

こばなみ:これホント、かなり汎用性のある考え方ですね。

ポジに捉えてみるって思ったら、たしかに気が楽になりますわ~。

ヒロさん、また新たなドラマのクールが始まったので、職場ではテレビ関連の会話がいつもより飛び交ってる時期だと思いますが、健闘を祈っております! 

 

 

 

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画・宇多丸

 

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ライムスター・宇多丸/日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。http://www.rhymester.jp/

 

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女子部JAPAN(・v・)こばなみ/2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成、現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN」と改名し、企画・運営に携わる。★2023年からは、働く女性リーダーを応援する「F30プロジェクト」を本格始動! 彼女たちの仕事上のコミュニケーションの課題解決の方法や実態、女性活躍支援に取り組む企業などを取材しています。よかったらチェックしてみてください。こちらどうぞ!

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