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第48回城戸賞準入賞作品シナリオ「ぼくたちの青空」全掲載

キネマ旬報WEB

1974年12月1日「映画の日」に制定され、第48回目を迎えた優れた映画脚本を表彰する城戸(きど)賞。本年度は、対象359作品から準入賞に「ひび」と「ぼくたちの青空」の2作品が選ばれました。

今、全世界的にもその存在が取り沙汰されるようになっているヤングケアラーに、瑞々しい感性で触れた「ぼくたちの青空」。そのシナリオ全文を掲載いたします。

タイトル「ぼくたちの青空」福田果歩

あらすじ

小学三年生の凪と、高校三年生の風太は、8年前の交通事故で父を亡くし、その事故の後遺症で、身体麻痺と言語障害が残る母・美歩の世話や家事を行うヤングケアラー。
凪は友達と遊ぶ時間を、風太は水泳部の活動を犠牲にしなければならなかったが、三人で過ごす日々を楽しく、大切に過ごしていた。
そんな中、凪の小学校でヤングケアラーに関するアンケートが実施されたことをきっかけに、凪の担任の鳴海が凪のことを気にかけるようになる。一方風太は、同じクラスで不登校の澪が、精神疾患を患う父の介護をしていることを偶然知り、心を通わせるように。
母の世話と介護に忙殺され、自身の進路について考える余裕がない風太。変わらず三人で暮らしたいと願いながらも、凪に同じ思いはさせたくないと、悩んでいた。
ある日、凪が家に帰ると、台所に美歩が倒れている。誕生日である風太のために唐揚げを作ろうとしたものの、上手く身体を動かせず、転倒してしまったのだ。美歩を助けようとして、腕に火傷を負ってしまう凪。偶然居合わせた鳴海が救急車を呼ぶが、美歩はパニックを起こし、入院することに。
その夜、風太は澪と夜の高校に忍び込み、プールで泳ぐ。束の間、何もかもから解放された自由を味わう風太と澪。しかし、近隣住民の通報によって、二人は補導されてしまう。
風太は水泳部を退部し、停学処分に。そこで風太は、澪が前日に高校を辞めていたことを知る。風太も家族のために高校を辞める道を選ぼうとするが、それを知った美歩は、スーパーで自ら転倒。周囲に助けを求めることで、風太と凪を自分から解放する道を選んだ。
その後。一緒にいることを望んだ三人は、様々な支援を受けることで、共に生活をしながら、それぞれの時間を過ごせるようになった。しかしそれは、三人だけの世界の終焉だった。新たな世界へと産み落とされた風太と凪は、プールから顔をあげると、生まれたての赤ん坊のように、大声をあげて泣いた。

              

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◆登場人物

月島 凪   (10) 小学四年生
月島 風太  (17) 高校三年生
月島 美歩  (44) 凪と風太の母

真澄 暖   (17) 風太の同級生
佐久間 澪  (17) 風太の同級生
月本 亮介  (38) 風太の担任

神保 つむぎ (9) 凪の同級生
鳴海 璃子  (28) 凪の担任
重岡 奏人  (31) 鳴海の先輩教師
五十畑 麻里 (48) スクールソーシャルワーカー

月島 真守  (故・38) 凪と風太の父
佐久間 徹  (52) 澪の父
佐久間 希和 (45) 澪の母

〇温水プール・水中
   プールの中、膝を抱えて、じっと水の中を見つめる月島凪(10)。
   青く透き通った水の中は、しんと静か。
   無音の水中で、そっと目を閉じる凪。
   遠くから、音楽が流れてくる。
   榎本健一の『私の青空』。

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