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映画脚本の登竜門! 第48回城戸賞発表

キネマ旬報WEB

 

選考対象脚本 359篇

日本映画製作者連盟会員会社選考委員の審査による第一次・第二次・予備審査を経て、以下10篇が候補作品として最終審査に残った。

「中山最終レース」  大島健一郎
「天地知る」  本山航大
「今度選ぶなら君にしたい」  仲村ゆうな
「SAKURA -さくら-」  古川美幸
「獣医はステキなことだらけ」  島田悠子
「横濱ブラフ六十八番館」  久継遥々
「ひび」  竹上雄介
「ダイヤモンドを獲れ」  長濱亮祐
「ぼくたちの青空」  福田果歩
「奏でて」  上野詩織

 

受賞作品

入選 該当作無し
準入賞「ひび」  竹上雄介
準入賞「ぼくたちの青空」  福田果歩
佳作「今度選ぶなら君にしたい」  仲村ゆうな
佳作「獣医はステキなことだらけ」  島田悠子

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第48回城戸賞審査委員

島谷能成(城戸賞運営委員会委員長)
岡田惠和
井上由美子
手塚昌明
朝原雄三
富山省吾
須藤泰司
明智惠子
会員会社選考委員
(順不同 敬称略)

 

準入賞者のプロフィール&コメント
準入賞者:竹上雄介(たけがみ・ゆうすけ)/ 受賞作品:「ひび」 東京都在住。大学卒業後、会社員の傍らでシナリオセンターに通い、脚本を学ぶ。第46回・47回城戸賞で最終選考に残り、今回、初入賞を果たす。2016年「伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞」奨励賞、2018年「北杜市シナリオコンクール」グランプリ、2021年「南のシナリオ大賞」優秀賞を受賞する。

受賞によせて
なんで本を書いているんだろうと思う時があります。
誰にも頼まれてないのに、映像化もされないのに、やらなきゃと奮い立たせて、一人で妄想を膨らませて、勝手に盛り上がって、キャストまで考えちゃって、自信満々でコンクールに出して、あっさり落ちて、でも「面白かったよ~」なんて言われると、すぐに勘違いしちゃって、っしゃまた書こう!のループ劇。

バカみたいです。それでも結局書き続けているのは、映画が好きだから、ドラマが好きだから、自分の作品が映像化されたいから。だから、いつまで経っても、バカみたいに、悪あがきしています。

「ひび」は、失恋したヒロインが元カレを吹っ切る話です。たったそれだけの話ですが、誰にも頼まれていないからこそ、自由に、自分らしく、好き勝手に書きました。そんな作品を評価して頂き、とても嬉しく思います。

けど、やっぱり脚本は映像化されないと意味がありません。だから映像化したいです。じゃあしましょう!なんて簡単な話じゃないのはわかっています。けど、それが本心です。

この想いを実現するためには、書き続けるしかありません。オリジナルで勝負できる脚本家になれるよう、これからも、あがき続けます。

準入賞者:福田果歩(ふくだ・かほ)/ 受賞作品「ぼくたちの青空」 日本大学芸術学部映画学科脚本コース卒業。現在は東宝株式会社宣伝部所属。これまでに伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2012中編の部で審査員奨励賞、日本大学芸術学部・渡辺俊平記念賞を受賞。

受賞によせて
本作を書いたきっかけは、偶然テレビでヤングケアラーのドキュメンタリーを見たことでした。ぼんやりとその言葉は知っていたものの、彼らの生活のほんの一部を見たことで、それまでの自分の認識とは本質が全く違っているのではないかと思いました。
当事者でもない、詳しくはその実情をよく知らない自分が、ヤングケアラーをテーマに書いていいのだろうかという思いもありましたが、彼らの日常をもっと知りたい、理解したい、という思いが強まり、本作を書くに至りました。

脚本を書くのはおよそ10年ぶりで、至らない点の多い脚本となりましたが、登場人物たちが今いる場所でキラキラと輝く日常を送る姿を描くことができ、また、城戸賞で準入賞をいただけたことで、もう一度脚本を書いて良かったなと思うことができました。

映画はエンターテイメントでありながら、それまでは知らなかった世界・日常を思いがけず知ることができる貴重な経験の場でもあると思います。知ったところで何もできない、何も変えられないとしても、知らないままでいるよりも「知っている」ということに、大きな意味があるように感じます。本作を通して、誰か一人にでも小さな声が届けられたら幸いです。

 

選者

富山省吾(日本映画大学理事長)
須藤泰司(東映株式会社 映画企画部ヘッドプロデューサー)

 

総評

■コロナ下での3回目の選考となりました。念願の入賞作品は今年もありませんでしたが、準入選、佳作を2作品ずつ選考できたことは良かったと感じています。それは近年の準入選受賞者の中から顕著な活躍をする人が現れ始めているからです。「ハケンアニメ!」吉野耕平(第42回「サムライボウル」)、「silent」生方美久(第47回「グレー」)。
対象作品が映画化されることが一番ですが、こうした才能を選出し光をあてることが映画脚本家登竜門である城戸賞の目的と考えます。今年の応募総数359編の中には再応募の人の作品が多数含まれていると思われます。その中から複数の方々が最終選考に残っています。どうやら脚本賞としての城戸賞の沸騰点が近づいているのではないか。来年こそ入賞作品の生まれる年になる。そんな予感を抱いた今年の選考会でした。
脚本に求めるもの。それは発見と興奮と共感。さらには、どうしても今、観客に観て欲しいと願う切実な作者のメッセージです。これらが結実した脚本の登場に期待します。(富山

 

■城戸賞はエンターテイメントの「映画」の脚本という事を意識して読ませて頂いております。観客はお金を払って、わざわざ劇場まで足を運んで観に来てくれる。そして、90~120分を劇場の暗闇の中で未だ見ぬ世界に出会うことを期待して、集中して観る、それに値する内容かどうか? もちろん完璧な脚本じゃなくとも、将来、そんな作品を生み出す力があるのか? 最終選考に残った作品は、今日的なテーマを果敢に扱った作品や、歴史上の出来事を独自の視点で描こうとする創作の努力が詰まった作品など、力作が揃いました。しかし一方で、物語の切り口や設定には“つかみ”があるのに、2時間弱の映画の時間をくぐり抜けるには体力不足の作品も多かった。基本的には主人公が障害を乗り越えてゆくことで観客も一体となり、ドラマチックに物語が動くと考えます。ですが、主人公がアクションを起こす前に周囲が主人公の気持ちを理解して助けてくれる、あるいはご都合で障害があっさりと乗り越えられてしまう……これではやはり物足りない。
画家になれるのは画家になりたい人ではなくて絵を描きたい人。同じように脚本家になるのは映画やドラマを作りたい人。そうあって欲しいと願います。未来の応募者の皆さん、たくさん映画を観て、大好きな作品を目指して、あなたの脚本を書いて下さい。まだ見ぬ心沸き立つ映画の物語が生まれることを期待します。(須藤

 

受賞作品選評

準入賞「ひび」受賞作全文はこちらからお読みいただけます

失恋から立ち直れないヒロインの苦い日々を描きつつ、下地に隠し笑いを湛える。主人公に沿って読み進められる脚本として人間喜劇が伝わって来る。人物と台詞に描写力を感じる。小学生匠のキャラとエピソードが類型的で惜しい。(富山

失恋を引きずり前向きになれないヒロイン自体に新味は無く、かなり無理な設定もぶち込んでくるが、それをねじ伏せて読ませる力がある。とにかく会話が面白かった。しかし、本来、もっと短くなるべき物語。それを台詞に頼って尺長してしまった印象。この「セリフ力」を武器に、より大きな物語を書いて欲しい。(須藤

 

準入賞「ぼくたちの青空」受賞作全文はこちらからお読みいただけます

ヤングケアラーを題材に、母との日常を守ろうと必死に抗う兄弟を肯定的に描く。丁寧な展開と兄弟エピソードの積み重ねで少年たちの心情が伝わり、共感を生む。過ぎ去った8年の中の母親の心の裡(うち)を描けばドラマとしてさらに高みに。(富山

ヤングケアラーというテーマと真摯に向き合う作者の誠実さが伝わってくる作品。その誠実さ故か、途中、教育映画のように説明的なシーンも見られるが、それが作品の魅力を損ないはしない。ヤングケアラーの兄弟が自ら境遇を切り開く要素が加われば、さらに共感を得る物語になったか。(須藤

 

佳作「今度選ぶなら君にしたい」

突然死んだ男を巡って女2人男1人が心を乱し絡み動く。三人三様の心の呟きを現した濃密な台詞で運ぶ、読み飛ばせない展開に筆者の持ち味と才気を感じる。ストーリーの主軸の起こしが遅い、妙なおかしみを買うとの声。(富山

今時の気分を切り取る会話、と審査員の評価。ヒロインに心を寄せる“年下男”は、近年の脚本コンクール応募作に頻出するキャラだが、多くはヒロインの承認欲求を満たす便利な装置でしかなく、本作もその陥穽にハマってしまった印象。(須藤

 

佳作「獣医はステキなことだらけ」

若き獣医見習いの涙と笑いの奮闘記。動物病院のリアルな実態を下敷きに、主人公の成長物語をコメディタッチで描く。ブラックな現状にどう向き合うのか。主人公から現状を改善する未来展望の意志が示されないのが惜しい。(富山

作者の獣医師としての経験が活かされている「獣医あるある」的な面白さで読ませる。しかし、その経験にあぐらをかいてしまったか? 主人公がもっと主体的に行動する要素を加えたならばグッと面白くなったはず。(須藤

 

最終選考作品

「中山最終レース」 
競馬のレースに全てを賭ける人々の物語。人生の岐路に立たされた人間の心情を描き、雰囲気がある。しかし、第一話、第二話とされた二つの物語に相互作用が感じられず、一本の映画としてのまとまりを欠いてしまった。(須藤

「天地知る」
天才を妬む秀才。大久保利通のモノローグで語られる江藤新平の生と死。楽しめるが安易との声。歴史上の有名人物と事件の脚色は脚本のオリジナリティか判別し難いので高評価に繋がり難いか。(富山

「SAKURA -さくら-」 
写楽の謎を通じて芸術家の“狂気”や“業”を描く事がテーマの作品か。色々な要素を散りばめて飽きさせない姿勢には好感が持てる。それが効果を発揮する一方で、全体としてはテーマがぶれてしまった印象。(須藤

「横浜ブラフ六十八番館」
幕末の横浜で女大工が職人として成長しつつ、恋もする。設定に惹かれたがもっと面白くできるのに勿体ないとの声。時代劇に女大工というモチーフを発見した後、それを生かし切るストーリーとドラマが欲しい。(富山

「ダイヤモンドを獲れ」 
プロ野球スカウトの物語。元ドラフト1位だが怪我で引退、スカウトマンになった主人公のやさぐれ感がとても良い。何より、見知らぬ世界に題材を求め、そこに物語の鉱脈を見つけ出し、脚本にしようとした作者の姿勢を最大限評価したい。(須藤

「奏でて」
サヴァン症候群の天才ピアニストと弟。実はその弟もかつてはピアニストだった。兄弟の和解と弟のピアニストとしての再生物語は好ましいが、まとまっているが新味がない、都合の良いストーリーとの声も。(富山

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