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パラ陸上“師弟対談”。アジア記録保持者・兎澤朋美が金メダリストから学んだマインドセット

パラサポWEB

兎澤 私にとって2度目のドイツ遠征のときの話ですね!

ポポフ そのときは、非常に申し訳なかったんだけれど、空港に迎えに行ってあげることができなくて。空港から目的地まで約3時間の道を、トモミは1人で電車とタクシーを乗り継がなければならなかったんだ。トモミはすごく不安そうだったよね。

兎澤 途中で電車を乗り間違えちゃったんです。

ポポフ でも、トモミはちゃんと自分で電車を乗り換えて練習場所があるレバークーゼンにたどり着いた。このことが彼女を一層成長させたような気がするよ。ドイツのトップ選手にも同じことを伝えているんだけど、コーチはアスリートをあるレベルまでは引き上げることができる。でも、それ以降、どうしても自分で越えなければいけない部分があるから、個人の成長のためにできるだけ自分でできることは自分でやらせているんだ。そういう積み重ねが、ここぞという試合でのメンタリティにつながると思うからね。

走り幅跳びと100mでアジア記録を持つ兎澤。「ポポフは競技以外の立ち振る舞いの部分もアドバイスしてくれます」――「かわいい子には旅をさせよ」ということですね。

兎澤 ポポフは空港に迎えにこそ来なかったけれど、私の便が空港に到着する時間はちゃんと把握していて、ドイツに降り立った瞬間くらいに電話をくれました。『大丈夫か?』って(笑)

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ポポフ たしかに、ときどきは少し引いたところから見守って、若い選手がミスをするように仕向けているんだ。やっぱり心配はしてしまうけれど、それはなるべく見せないようにしているつもり。

兎澤 ときどき、ポポフの優しさには気づいています。

義足のセッティングについてポポフに相談する兎澤――素敵な関係性ですね。兎澤選手にとって、ポポフ氏はどんな存在ですか。

兎澤 お兄ちゃんに近い感じかもしれません。ポポフは忙しく飛び回っているので、実は頻繁にSNSで連絡を取り合うというわけではないんです。でも、本当に必要な時に手を差し伸べてくれるんです。

ポポフ SNSで返信を書くのは苦手だし、夜は疲れて既読のまま寝ちゃうことが多いかな(笑)でも、重要だと思ったら、電話をするかボイスメッセージを送るよ。

兎澤 ボイスメッセージは車移動中に吹き込んでくれているみたいで、いつも車の騒音が聞こえます(笑)

多忙なポポフ氏に連絡すると、たいてい「車か飛行機かミーティング中」だという。いろんな分野の人と対話をして「障がい者にとって素晴らしい未来をつくるために戦っている」――ポポフ氏が兎澤選手に期待することを聞かせてください。

ポポフ トモミはすごく成長している。今後に向けて、もっと自分を信じ、どんどん進んでいってほしいと思う。日本人はやはり島国の文化なのか、対外的ではないところがあるが、トモミなら国際舞台で活躍する人になれるのではないか。日本のいいところをもっと世界に紹介して広げたり、各国との接点をつくるアンバサダーみたいな役割を担ったりするのもいいよね。
あと、もう一つ、日本ではトモミに続く次世代のアスリートがいない。だから彼女に必要なことは次世代アスリートの育成だと思っている。これは彼女もよくわかっているはずだけど、次世代の育成はパラリンピックでメダルを獲ったり、試合に勝利すること以上に大切で誇らしいことなんだ。

兎澤 はい。ポポフからは立ち振る舞いや環境を整えることも大事だと学びました。
試合で『もっと自分に自信を持て』というのは、ポポフから本当にしょっちゅう言われること。マインドセットの仕方は、競技の中の技術以上に、ポポフからかなり影響を受けている部分です。いい方向を探りながら、進んでいければと思っています。

text by Asuka Senaga
photo by Haruo Wanibe

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