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慶大蟹江ゼミ生が見つめる東京オリパラとSDGsの「レガシー」、日本の現在地 

パラサポWEB

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催から1年が経った。コロナ禍での1年延期、無観客開催という前例のない同大会は日本に何を残したのか。大会が社会に与えた影響について、SDGsの視点から調査を行った慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス蟹江憲史研究室のメンバーにインタビューを行った。

慶応義塾大学蟹江憲史研究室について
SDGs策定のプロセスにも携わった、この分野の第一人者である蟹江教授の研究会。SDGsそのものを研究対象に企業、自治体とのコラボも行いながら活動を行っている。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の持続可能性に関して、SDGsの観点から、学生主導で分析・評価をする活動を行った。なお、本活動は、慶應義塾大学SFC研究所上席所員の佐々木剛二が指導に当たっている。

インタビューしたメンバー
※在籍内容については2022年7月のインタビュー実施当時
西岡浩平さん(慶應義塾大学総合政策学部卒業生)
2020年〜2022年にオリンピック・パラリンピック・プロジェクトに参加し、リーダーとして活動。

清水凜太郎さん(慶應義塾大学総合政策学部4年)
2022年よりオリンピック・パラリンピック・プロジェクトに参加。同プロジェクトの発信、地球環境に配慮したスポーツのありかたについて研究。

【SDGsへの興味のきっかけ】
海外留学時に感じたサステナビリティへの意識の違い

イギリスへの留学を経験した西岡さん。留学先でお世話になった先生との1枚(本人提供)ーーSDGsへの興味や大学の研究会に入ったきっかけについてお聞かせください。

西岡さん:僕は、大学3年の時に1年間休学してイギリスに留学したのですが、そこでの経験が大きかったと思います。イギリスでは、一般の人たちの『SDGs』や『サステナビリティ』に対する意識がとても高く、衝撃を受けたんです。

ーーどのようなことがあったのですか?

西岡さん:生活の中で『サステナビリティ』に関する話題が出てくるのは、日本より多いなという印象は日々ありましたが、大学にゲストスピーカーとして来られていた企業の方々から聞いた話も大きかったです。『消費者の方々からの働き掛けから始まって、リサイクル業者と提携してフローを整え、サステナビリティに大きく配慮する会社になっていった』といった飲料メーカーのエピソードや、ポリ袋を全く使わないとしたコンセプトのマーケットがあったりと、『消費者の価値観があるからこそ、企業が変わる』といった視点での事例を日本ではあまり聞いたことがなかったので驚きました。

留学以前にはスポーツビジネス関係のゼミに所属していたのですが、今度はサステナビリティやSDGsといった視点からもスポーツをみてみたい、蟹江ゼミのことを知って研究したいと思いました。

アメリカの高校経験で得たボランティア活動とは

アメリカ在住時、大好きなサッカーをプレーする清水さん(本人提供)ーー清水さんはどうですか?もともと社会課題への意識などあったのでしょうか?

清水さん:小学生くらいから何となく”同じ地球の中で食糧難の人たちがいる”といったことへの問題意識があって、ユニセフ募金に積極的に参加するなどはしていましたが、当時はそれくらいでした。その後、中高はアメリカに在住していたのですが、高校在学中に参加した「フードパッキング」というボランティアプログラムがきっかけとしては大きいですね。

ーーフードパッキング……ですか?

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清水さん:はい。これは、学生にとっての必須科目となるプログラムで、授業が終わるとその作業場所に出向き、アフリカや南米に向けて食料を詰めて送るといったサポートをします。このボランティアを1年間続けることで単位をもらえるんです。その頃から大学に行ったらこういうことを学びたいなと思うようになりました。ただ、サッカーをやっていたのでそちらが優先になっていましたが(笑)。

それで、大学2年生になって地球環境に関する科目をとった時に「このままでは水不足や温度上昇で地球があぶないんだ」と意識するようになり、さらに深く学びたいとSDGsの研究会に行き着きました。実は、この時に初めて、SDGsが餓死をゼロにということから環境問題のことまで幅広くカバーしているんだと気が付きました。ここだと全部学べるんだ!って(笑)。

【東京大会におけるSDGs調査について】
環境、経済、社会の3領域を質と量の2軸から調査

ーー今回のプロジェクトでは、どのような内容を調査されていたのでしょうか?西岡さんはオリパラ期間も含めて調査時のリーダーとして活動されたと聞いています。

西岡さん:はい。今回の研究は、もともとは、組織委員会からの委託研究としての「オリンピック・パラリンピック競技大会影響調査(OGI)」が予定されていて、慶應義塾大学もメンバーとして選ばれていたことが発端でした。それが組織委員会の判断で中止になってしまったのですが、『この調査はとてもやる意義がある』といった蟹江先生の思いがあって、研究会の学生主導でやっていこうとなったんです。

環境、経済、社会と3つの領域で検証しました。例えば、環境ですと、水質や気候変動といった評価項目を細分化していった上で、大会開催の前と後のデータからの量的調査とインタビューやフィールドワークなど質的調査の側面からの2軸で行いました。東京2020大会が、日本社会にどう影響をもたらしたのかを研究し、長文のレポートにその成果をまとめました。

ゼミの学友と一緒にフィールドワークも実施(本人提供)ーー清水さんは実際の調査後に参加されたということですが、現在はどのような形で引き継いでいるのでしょうか

清水さん:これまでにまとめた詳細なレポートは、先輩方が卒論としてまとめた研究結果ですが、公な調査報告書という形では発表をしているものではないので、今後その内容をどう発信していくかを話しています。書籍なども案としては上がっていますが、まずは、SNSやWEBサイト上での発信を考えています。

サステナブルな大会を目指した運営施策の成果は?社会へ浸透させるためには

ーーサステナビリティやSDGsに注力していくとしていた大会でしたが、その成果はみられたのでしょうか。

西岡さん:全体を通しての話ですと、取り組み自体は様々な施策が打たれていたという印象はありました。環境を例にあげますと、カーボンフットプリント削減を考慮した競技場設計や、一酸化炭素の排出量ゼロを目指した運営であったり、東京湾の水質環境改善を伴うフィルターの施策など、大会を開くにあたっての取り組みが多く見受けられましたし、そこには一定の成果というのもあったと思っています。

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