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毎日たった5分でOK!有酸素運動が脳に与えるスゴイ効果とは

パラサポWEB

ハンセン氏は、原始時代と現代の人間の脳にはほとんど変化がないと繰り返し述べている。脳は変化していないのに、私たちをとりまく環境は莫大な情報が存在しているため、注意力を削がれるのは当たり前だろう。氏曰く「人類の歴史が始まってから2003年までの分量に相当する情報が、わずか2日で生まれている」のだから。

そこで集中力を脳に戻すプランだが、運動するに当たっては以下のポイントがある。

・歩くよりは走ろう(身体に負荷がかかればかかるほど、脳はドーパミンやノルアドレナリン(集中物質)をたっぷり放出する)
・理想的な心拍集の目安は、最大心拍数(220から年齢を引いた数字)の70~75%
・運動は朝にする
・5分からでも効果はあるが、可能であれば30分続けてみる
・運動を習慣にする

記憶を司る脳の中枢“海馬”が運動によって大きくなる!?

続いて学力だが、『運動脳』ではスウェーデンのある小学校での事例が紹介されている。調査の対象となった小学校で、時間割に体育が毎日組み入れられたクラスと通常通り週2回体育を行うクラスで学力が比較された。その結果はこうだ。

まず、毎日体育の授業を受けた生徒は、週に2回の生徒よりも体育の成績がよかった。これは当たり前の結果だ。予想外だったのは、この生徒たちが特別な指導を受けたわけでもないのに、算数や国語、英語でもよい成績をとったことである。
(中略)それだけではなく、たった4分(これは目の錯覚ではないので、ご安心を)の運動を一度するだけでも集中力と注意力が改善され、10歳の子どもが気を散らすことなく物事に取り組めることも立証された。
(『運動脳』(サンマーク出版)より)

集中力を上げる運動のポイントとして心拍数についてご紹介したが、この学力アップのための運動でも、どのようなものを選ぶかは問題ではなく、やはりポイントは心拍数なのだそう。そして、理由はまだ明らかになっていないらしいが、多くの研究データによれば、小学校に通う学童期が最も運動の恩恵を得られるのだという。小学生のお子さんをお持ちの親御さんは気に留めておいた方が良いだろう。

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そして記憶力。脳では1日に10万もの細胞が死滅するという話を聞くと、記憶力に自信がなくなってくる世代などはゾッとするに違いない。記憶を司るのは脳の“海馬”と呼ばれる中枢だが、たとえばアルコールや薬物は加齢のスピードを加速させ、海馬の萎縮を速めてしまう。それを食い止めることは不可能だと考えられていたのだが、その定説を覆す研究が現れた。これもやはり運動がポイント。

アメリカの研究チームが、120名の被験者を対象に、1年の間隔を空けて2回、MRIで脳をスキャンして海馬の大きさを測った。
実験に先立ち、被験者たちは無作為に2つのグループに分けられ、異なるタイプの運動を行うように指示された。いっぽうは持久力系のトレーニング、もういっぽうは心拍数が増えないストレッチなどの軽いエクササイズだ。
1年が経過すると(中略)軽い運動を行ったグループの方の海馬は、1.4%縮んでいた。とはいえ、海馬は1年で約1%縮むのだから、これも騒ぐほどではない。
それよりも研究者達の目を引いたのは、持久力系のトレーニングを行った被験者達の海馬がまったく縮んでいなかったことである。それどころか、成長して2%ほど大きくなっていたのだ。
(『運動脳』(サンマーク出版)より)

この被験者たちが取り組んだ持久力系のトレーニングとは、具体的には週に3回、40分早足で歩いただけだったそう。効果は上記だけにとどまらず、運動によって健康状態が大幅に改善した人たちは、2%以上も海馬が大きくなっていたのだという。
試験勉強や仕事の関係で何かを覚えなければいけないときは、“散歩に行っている暇はない”と言わず、記憶するために散歩に行こうと考えるべきだろう。

『運動脳』には運動の脳に対する効能はここでご紹介したもの以外にも、ストレスの軽減やうつの改善やモチベーションアップなどに関しても詳しく説明されている。興味のある方は一読をおすすめする。最後にハンセン氏による結論を紹介して締めくくろう。

まず何よりも重要な点。それは、たとえわずかな1歩でも脳のためになる、ということだ。
もちろん5分よりは30分のほうがいいが、5分でもまったく価値がないわけではない。あなたが楽しいと思える活動からしてみよう。
(中略)そして、有酸素運動を中心に行おう。筋力トレーニングも脳によい影響を及ぼすが、どちらかというと有酸素運動の方が望ましい。
(『運動脳』(サンマーク出版)より)

本書を読んで、一番驚いたのは、私たちの脳が原始の時代からほとんど変化していないということだった。野山や平原を駆けまわる原始の生活を思い描きながら運動することで、よりよい効果が得られそうだ。


<参考図書>
『運動脳』

アンデシュ・ハンセン著/サンマーク出版
これまで脳の機能は、年齢を重ねるにつれて衰える一方だとされていた。しかし、成人後も脳内の前頭葉が大きくなり、死の直前でも海馬の細胞数が増えた人たちがいた――。彼らに共通していたのは「有酸素運動」を日常的に行っていたこと。たった5分のウォーキング・ランニングが脳に作用する。学力・集中力・記憶力・創造性……脳のあらゆる力を伸ばす運動の秘訣を記す1冊。

text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)
photo by Shutterstock

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