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『天使にラブ・ソングを2』はなぜ愛され続ける? 原題『Sister Act』から紐解く

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『天使にラブ・ソングを2』©1993 TOUCHSTONE PICTURES. All rights reserved.

 12月9日の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で、映画『天使にラブ・ソングを2』が放送される。

 参考:【写真】現在67歳のウーピー・ゴールドバーグ

 12月2日には、前作にあたる『天使にラブ・ソングを…』が放送され、そのときもSNSを中心に大きな盛り上がりをみせた。また、12月から2023年1月にかけて全国各地で上演される舞台版も大きな話題を呼んでいることが象徴的なように、同シリーズは、約30年近くも前に公開された映画であるにもかかわらず、今もなお根強い人気を誇っている。まさに、時代を超えて愛され続けている名作だ。

 『天使にラブ・ソングを2』について詳しく紹介する前に、まずは先週放送された前作『天使にラブ・ソングを…』の振り返りから。主人公は、クラブ歌手のデロリス(ウーピー・ゴールドバーグ)。ある殺人事件の現場を目撃したことで、ギャングに命を狙われるはめになってしまったデロリスは、警察に相談して、重要参考人として法廷に立つまでの間、修道院に身を隠すことになる。型破りな性格のデロリスは、はじめこそ、何よりも厳粛さを重んじる修道院の生活に馴染めず、修道院長(マギー・スミス)と衝突を繰り返していたが、次第に、シスターたちとの交流を通して成長を重ねていき、それまで堅苦しい伝統に縛られていた修道院全体にポジティブな変化を与えていく。

 『天使にラブ・ソングを…』の原題は『Sister Act』であり、これは、この物語の要となるシスターたちの聖歌隊によるパフォーマンスを指す。もともとデロリスが来る前まではバラバラで下手くそな合唱だったが、彼女の指揮によって次第にパフォーマンスに磨きがかかっていき、最後には、修道院を飛び出して、世の中から大きな注目を集めるポップアーティストへと成長していく。ここで面白いのは、デロリスとの音楽を通した交流によって、それまで禁欲的な生活を送ってきたシスターたちの内なる感情が発散されていくプロセスである。

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 例えば、中盤、シスターたちが、デロリスを追って入り込んだクラブで、ジュークボックスから流れるポップミュージックに合わせて踊り始めるシーンはとても痛快だ。また、デロリスに自発性、積極性を刺激されたシスターたちが、ゴスペルを基調とした聖歌隊の歌唱に、オリジナルの要素として、軽快なリズムや踊りを嬉々として加えていく展開には、観ていて思わず心が踊る。そうしたシスターたちの姿を見て、音楽とは、本来これほどまでに自由で、楽しいものであることを再確認した人はきっと多いと思う。

 今回放送される『天使にラブ・ソングを2』も、そうした音楽の自由さ、楽しさをめいっぱい伝えてくれる物語となっている。前作から1年が経ち、シンガーとして大きな成功を収めたデロリスは、(『Back in the Habit』という原題のサブタイトルが示しているように)修道院長やシスターたちの懇願により、再び修道衣を身にまとうことになる。その懇願とは、まったく大人たちの言うことを聞かない社会奉仕先の高校の生徒たちを音楽の力で導いてほしい、というものであった。

 今作は、修道院の中の物語であった前作とは大きくテイストが変わり、デロリスが高校の音楽のクラスを担当する青春学園ものへとジャンルがシフトしている。まるで、かつての自分自身のように自由奔放な生徒たちに真摯に向き合いながら、一人ひとりの個性や才能を開花させていく展開がとても感動的で、そうしたプロセスからは、前作の経験を踏まえた上でのデロリス自身の成長も垣間見ることができる。

 特筆すべきは、この物語の核となっているのは、やはり音楽であるということだ。生徒たちは、大人たちに対して反抗的な態度を繰り返してとっていたが、しかし、楽しいことに対しては何よりも積極的な一面も持ち合わせていた。そして、彼ら、彼女らにとって、その楽しいことの一つが音楽である。序盤、みんなで屋上に集まってラップバトルするシーンが象徴しているように、生徒たちにとって音楽は、自身のアイデンティティを自分らしく表現する手段の一つとなっている。

 また、女子生徒のリタ・ワトソン(ローリン・ヒル)の「あんたのラップがロックなら/私のラップはジャズスタイル」といったラップは、彼女たちが、何にも縛られることなく自由に音楽を楽しんでいる様子を伝えている。そして、そうした音楽の楽しみ方は、デロリスの先進的な音楽観と非常に相性が良い。デロリスは、音楽を通して一人ひとりの可能性を見出しながら次第にクラスを一つにまとめ上げていき、物語の後半では、コンクールへの出場という大きな目標を共に目指していくことになる。

 ここから先の展開についてはネタバレとなってしまうため詳細な記載は省くが、登場人物たちが自由に音楽を楽しむ姿はとても輝かしく、また、一人ひとりの生徒が、音楽による交流を通して、自発性・積極性を獲得したり、自分以外の他者をより深く理解したりしていくプロセスは、いつ何度観ても強く心を動かされる。どれだけ時代が経っても、音楽が誇る根源的な可能性は不変であり、それが、このシリーズが長年にわたり愛され続けている理由でもあるのだろう。今回の『金曜ロードショー』を通して、この映画を初めて観る10代、20代の人もきっと多いはずで、きっと今作は、そうした世代の人たちにも響くような普遍性を秘めていると思う。

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