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佐野弘樹、『舞いあがれ!』水島はハマり役だった? “思いを秘めた”演技の奥深さ

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『舞いあがれ!』写真提供=NHK

 ヒロインの舞(福原遥)にほのかな恋愛フラグが立ち上がった『舞いあがれ!』(NHK総合)第9週。お相手は航空学校の同期・柏木(目黒蓮)だ。帯広分校でのフライト訓練で、それぞれの課題にぶち当たり、お互いを支え合う過程で舞と柏木の心は少しずつ近づいていく。何もかも正反対な二人を結びつけたのは、「パイロットになりたい」という強い思い。だけど、影の立役者は舞、柏木と同じチームの水島(佐野弘樹)ではないだろうか。水島はチーム内の空気を読みながら、常にベストなポジションに居続けた。

参考:『舞いあがれ!』福原遥と濱正悟が“なんで今?”に困惑 チームの絆が孤独な戦いを支える

 水島役の佐野弘樹は1993年生まれで、12月で29歳となる。作中の設定では中澤(濱正悟)が舞たち同期6人の中で最年長となっているが、キャスト内で一番年上なのは佐野だ。大学時代に演劇を始め、小劇場の舞台からキャリアをスタートさせた佐野。その後、オーディションを経て麻生久美子や黒川芽以、深水元基らが籍を置くブレス所属の俳優に。以降は映像作品への出演が増加し、2018年には竜星涼主演のAmazon Originalドラマ『紺田照の合法レシピ』にレギュラー出演を果たした。

 佐野が演じたのは、主人公が所属する指定暴力団の敵対する組織の一員。この役をはじめ、映画『町田くんの世界』(2019年)や『Bittersand』(2021年)でも、素行不良だけど弱さも隠しきれていないような、いわゆる“チンピラ”の役回りが多かった。佐野にはいまいち真意を測りかねる、掴みどころのない雰囲気があり、一度その存在を捉えると目が離せない。

 その唯一無二の存在感を携えたまま、イメージをガラリと変える役に挑んだのが『浜の朝日の嘘つきどもと』(2021年)だ。本作は、高畑充希演じる主人公のあさひが、亡き恩師・茉莉子(大久保佳代子)との約束を果たすため、閉館が決まった映画館「朝日座」の再建に奮闘する物語。佐野は、ベトナム出身の技能実習生・バオを演じた。あさひや茉莉子と擬似家族的な関係を築いていく重要な役どころだ。

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 誰に対しても好意的で、特に自分を救ってくれた茉莉子には忠誠を尽くすパオ。思わず世話を焼きたくなる愛されキャラを佐野は体現しながらも、パオが日本での生活に感じている苦悩、自分に対して永住権や遺産を残そうとしてくれている茉莉子への感謝と戸惑いとの間で揺れる心を映し出す。ラストで茉莉子を看取るシーンでの、鼻水を垂らしながら泣きじゃくる芝居はかつてないほど心を持っていかれる名演だった。

 初見は何も考えていなさそうで、実はその内に色んな思いを秘めている役が佐野は抜群に上手い。映画『この街と私』での主人公のヒモ彼氏役も欠点はあれど、人としての優しさと温かみも感じさせ、主人公にとってなくてはならない存在であることを思わせた。この役で佐野は第5回賢島映画祭で助演男優賞を受賞している。

 『舞いあがれ!』で演じる水島もチャラチャラしているが、決してその一言だけでは片付けられない深みのある人物だ。ストイックで自信家の柏木と矢野(山崎紘菜)、どこか達観している中澤(濱正悟)、おっとりとした性格の舞と吉田(醍醐虎汰朗)。そんなバラバラなメンバーをゆるく繋ぎ合わせているのも、実は水島なんじゃないだろうか。

 佐野が本作のドラマガイドで「水島は、一見ただのお調子者ですが、単にふざけているのではなくて、彼なりの気配りがあるのだと理解して演じています」と語っているように、少々空気が読めない言動も、何に対しても熱くなりすぎない一歩引いた態度も“あえて”そうしている感じがする。誰よりも周りが見えていて、舞と矢野が以前より仲良くなったことも、舞と柏木に“アオハル”が訪れそうなことも、最初に気づいたのは水島だった。“お調子者の自分”を作っている感じを滲ませる、かなり難易度の高い芝居を佐野はこなしている。

 他にも舞のプロシージャーの練習に付き合ったり、喧嘩中にもかかわらず柏木の弱点克服を手助けしたり、至る場面でいい子なんだろうなと感じさせてきた水島。でも、だからこそ心配なのも水島だ。初めてのフライト訓練で飛行機酔いしていたり、プロシージャーの手順も舞以上に抜けていたり、水島には様々な課題があるように思えるがそれに一切向き合っている感じがない。いや、ここでも“敢えて”向き合わないようにしているかのような態度を取っている。

 気になったのは、同期たちとのパーティーでのシーン。水島は「気が済んだら帰ってこいとお父さんが言っています」と書いてある母親の手紙を、顔をしかめながらぐちゃぐちゃに丸めていた。その後、「落ちたら群馬に戻って水島ストアの店長だもん。俺、昔から何やっても続かないから、ほらやっぱりかって親父から笑われるんだろうけど」と柏木に話す水島は、表情は笑っていても、どこか痛々しげ。二人は正反対のように思えたが、実は失敗や弱いところを見せるのが苦手なところは共通しているんじゃないだろうか。柏木と違い、本音を取り繕うことができる器用さがある分、水島の方がその異変に周りが気づきにくい。

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