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脳内がグチャグチャになっていくような感覚を味わえる衝撃作 イザベル・アジャーニ主演『ポゼッション』

映画スクエア

ポゼッション 4Kリマスター版

飯塚克味のホラー道 第31回『ポゼッション』

 今回、紹介する作品は先日、豪華特典満載でリリースされた1981年のフランス映画『ポゼッション』。日本で初めて上映されたのは、1987年の東京国際ファンタスティック映画祭だ。『死霊のはらわた2』がオープニング、『ロボコップ』がクロージングだったこの年、『ポゼッション』は異彩を放って、観客を大混乱させた。1984年作の『私生活のない女』の方が先行して公開された日本の観客にとって、アンジェイ・ズラウスキー監督はまだまだ未知の存在だった。彼の作家性もつかみ切れていなかったところに、イザベル・アジャーニ見たさにやって来た無防備な観客はハンマーで頭を叩かれたような衝撃を受けたのだ。

 映画はドイツの西ベルリンにある家に、久々に帰ってきた夫マルク(サム・ニール)が、妻アンナ(イザベル・アジャーニ)が別人のように変わっている姿を見て、困惑するところから始まる。どうもアンナには浮気相手がいるらしく、家を空けては帰ってきたりするが、ハインリッヒという男が浮気相手ということが分かってくる。しかし、そのハインリッヒも知らない、第3の存在が浮かび上がってくる。

 あらすじだけ聞くと、ただの夫婦間のもめごとのように思えるが、実はクライマックスに近づくに従って、驚愕の展開が待ち受けて、観ているこちらの脳内がグチャグチャになっていくような感覚を味わえるだろう。2020年1月にリバイバル公開された際には、多くの観客が駆け付けたそうだが、SNSでその混乱ぶりが伝えられ、リアル世代としては非常に嬉しい結果となった。

 監督はポーランド出身のアンジェイ・ズラウスキー。当時、社会主義だった祖国で『悪魔』(1972)が上映中止になり、SF大作『シルバー・グローブ/銀の惑星』が製作中止に追い込まれたことで、彼は海外に活動の拠点を移した。『シルバー・グローブ/銀の惑星』はその後、1987年に未完成のまま、仕上げが行われた。

 主演はイザベル・アジャーニ。フランソワ・トリュフォー監督の『アデルの恋の物語』(1975)でこの世のものと思えない美しさと狂気を醸し出し、鮮烈過ぎるインパクトを与えた。その後、国際女優として世界各国で活動を広げていた。夫のマルク役はサム・ニール。今年、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』でも元気な姿を見せてくれた演技派のスター俳優だ。あと特筆しておきたいのが、特殊効果を担当したカルロ・ランバルディだ。『E.T.』(1982)や『砂の惑星』(1984)で見事な造形を作り上げた彼が、この映画でどんな存在を生み出したのか、是非ともその目で確認してもらいたい。

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 今回のリリースは4Kリマスター版となっており、丁寧にレストアされた美しい画質に仕上がっている。広角で撮影された西ベルリンの街並みや、独特の空気感が堪能できる。もちろんアジャーニ嬢の美しさも絶品レベルだ。これに関しては本作の撮影監督だったブルーノ・ニュイッテンが当時、彼女の夫だったことも関係しているだろう。ソフトに関しては本編のみでもリリースされているが、本作のファンであれば、特典ディスク2枚がセットになった『超・特別版』を薦めたい。ブルーレイの特典には7時間を超える大ボリュームの映像を収録し、更にイザベル・アジャーニのフォトブックまで同梱されている。こちらはいわゆる映画の場面写真ではなく、オフショットの写真を多数収録し、巻末には彼女の出演作のチラシ画像までコラージュされているのだ。

 特典はさすがに全てをコンプリートしていないのだが、見た中では『壁の向こう側/メイキング・オブ・ポゼッション』が出色。アジャーニ出演の経緯や、サム・ニールの仕事に対する真面目さがうかがえる一方、アメリカでの公開時に酷い扱いを受けたことも明かされる(その際作られた短縮版の別バージョンも収録されている)。またカンヌで上映された時の受け止め方や、問題のトランスシーンの撮影の裏側など、知りたいことが次々と語られるのも嬉しい限り。ホラー枠で紹介しておきながら、こういうのもなんだが、監督が「よく勘違いされるが、この映画をホラーだと思うバカがいる」と断言しているのも痛快。この映画は仮面をかぶっていると語っているのだが、監督の発言を聞いていくと、この映画が本当に伝えたかった真実が見えてくるはず。特典をチェックして、もう一度、映画を観ると、全く違った見え方をするはずなので、何度でも繰り返しチェックしてほしい。

ポゼッション 4KリマスターBlu-ray3枚組 超・特別版

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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』(毎週土曜日放送)の演出を担当する。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。

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