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生田絵梨花、『PICU』で光る“等身大”の演技 乃木坂46から親しみのある名女優に?

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『PICU 小児集中治療室』©︎フジテレビ

 生田絵梨花は、乃木坂46卒業後も、歌に舞台と強みを活かした活動をしてきたのと同時に、ここ数クールは『オールドルーキー』(TBS系)、『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系/以下『PICU』)、そして映画『Dr.コトー診療所』への出演を控え、演技での活躍が目立っている。そこで、現在放送中の『PICU』での活躍を軸に、女優としての生田絵梨花の魅力を掘り下げてみたい。

参考:生田絵梨花、松村沙友理、堀未央奈、北野日奈子 秋ドラマで辿る乃木坂46卒業生の軌跡

 『PICU』は、北海道を舞台に、新設された小児専門のICU(集中治療室)での主人公たちの奮闘を描く医療ドラマ。生田演じる涌井桃子は、主人公の小児科医・志子田武四郎(吉沢亮)の同級生で幼なじみでバスガイドを務めている。武四郎を女手一つで育ててきた母・南(大竹しのぶ)も同じバス会社で働いており、武四郎の家にやってきては茶飲み話で盛り上がるほど仲良しだ。武四郎が幼い頃からずっと思いを寄せるマドンナ的存在だが、彼女はまったく意識していなかった。桃子は初回に妊婦として登場し、南は武四郎に「かっこつけている間に他の男に取られた」と後悔するほど。親しみやすく明るい等身大の女性を演じている。

 生田は、乃木坂1期生として初期からグループの最前線で活躍する一方、得意のピアノと歌でミュージカル女優として実績を残してきた。ミュージカルでは『リボンの騎士』のサファイアや、『ロミオ&ジュリエット』のジュリエット、『レ・ミゼラブル』のコゼットなど、数々のミュージカルに出演。どの役でも共通しているのが、「明るく健気で心優しく芯も強い」性格だ。そうした人物の繊細な胸の内を美しい歌声で訴えてくるのだから、生田の舞台での演技は心に響く。また、2015年に出演したドラマ『残念な夫。』(フジテレビ系)では、ピアニストを夢みる女子高校生という自身のキャラが活かされた役を演じ、2021年にドラマ『イチケイのカラス』(フジテレビ系)にバレリーナ役でゲスト出演。10年のブランクをものともせず、完璧に仕上げてきた「白鳥の湖」の美しい姿、青春時代の無邪気な笑顔、プレッシャーに負けないよう踏ん張るも溢れ出てしまう涙、叶わなかった初恋を思い出す切ない表情など、自然な感情を無理せず表現していく演技だった。

 グループ卒業後に初出演したドラマ『ゴシップ #彼女が知りたい本当の○○ 』(フジテレビ系)では就活中に性的被害を受けた女子大生役を演じ、今作でも言葉に言い表せない悔しさを表情で見せていく演技を見せる。一方、グループ在籍時に撮影した映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』では男性を惑わすセクシーな小悪魔役、主演を務めた『世にも奇妙な物語’22 夏の特別編』(フジテレビ系)の『メロディに乗せて』では、脳内に流れる音楽に合わせた行動をとらないと脳が異常反応を起こしまうOL役など様々な演技で芸達者ぶりを発揮する。

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 しかし、卒業後ドラマ初レギュラーとなった『オールドルーキー』では、元プロサッカー選手の妻・新町果奈子の妹でグルメライター・糸山留美を演じ、果奈子が本音を吐き出せる相談相手として頼りになる脇役を演じた。正直なところ、生田の実績なら、同じ乃木坂46卒業生の白石麻衣や西野七瀬のように、ヒロインのポジションで初出演でもおかしくない。ただ、最初の作品のインパクトが強いと、演じたキャラのイメージが付いてしまう可能性が大きく、女優として様々な役を演じていくなら色を付けないことは賢明な選択と言える。これまでの“ミュージカル女優”という華を脱ぎ捨て、等身大女優としての地道な歩みが『PICU』という繊細な作品に生田が溶け込むことができた理由だろう。これはミュージカル出身の高畑充希や上白石萌歌、上白石萌音の歩みと通じるところがある。

 『PICU』は優しいドラマだが、命が関わる非常に辛いドラマでもある、そこで生田はいかに“平常な人”を演じるか。このドラマの一つの肝は、武四郎と南の親子の関係だ。よくある親子と一緒で、親子だからこそぶっきらぼうで、変に心配させたくないし、恥ずかしいから弱音を見せたくない、もしくは本音を見たくないというのもあるだろう。ただ根底には幼少期に父親を亡くし、女手一つで息子を育て上げた母親と、そんな苦労を見てきた武四郎は母親を安心させるため医師を志した。しかも2人暮らし、見えない愛情が深い絆で結ばれている。この親子関係の間に、桃子は親戚のように自然と溶け込んでいる。武四郎の家にいて、武四郎が帰ってくると「おかえりー」と言える自然さ。それだけ近い関係だからこそ、母親に本音が言えないように、桃子に告白できなかったのだろうか。南にとっては娘のような存在で、唯一心が許せる親友だ。親友というのもまた、本音は照れ臭くて隠したいものだが、相手の気持ちを察して心配する思いは親子以上。そうした関係性を生田は自然に演じていく。

 武四郎は医師なのに母の癌に気づかなかったことに後悔し、医師だからこそ未来が分かってしまう。仕事のことで頭がいっぱいで、母親にまで気が回らなかった。そして、南は息子に気を遣わせたくなかった。桃子は両方の思いが分かるから自然と涙が溢れ、南の病気のことを知って「武ちゃんのお母さんだけどさ、それだけじゃないから、南ちゃんは南ちゃんだから。なんかあったらすぐ連絡して」と心配の感情を必死に柔らかい表情にして声をかける。そして南が「なんでうちにお嫁にきてくれなかったんだろう、こんな素敵な娘さん」と言うと、涙をこらえて「バカ言いなさんな」と、照れなど様々な感情が詰まった表情を見せる。

 この1シーンだけでも、かけがえのない関係性を視聴者に感じさせる名演技を見せる。元々、表情や眼差しで感情を伝える演技が上手だが、人を丁寧に描く今作だからこそ、生田の魅力が十二分に引き出されているのかもしれない。もしかしたら、生田自身がドイツ生まれのお嬢様育ちで、演技ではなく人として滲み出る心の余裕が、桃子の“いい人感”を自然と醸しているのかもしれない。それだけに、“妊婦役”ということが引っかかる。武四郎は、母の病気のように、桃子の妊娠も気付くのが遅かったが、そうした武四郎の後悔を強調する為のものなのか? 本当に観ていてやるせない気持ちにさせるが、今後、この桃子の妊娠もPICUと絡んできてしまうのだろうか。

 生田は、感情を表情に乗せて伝えることが上手い女優であり、等身大の役になればなるほど自然にそれを見せてくる。『PICU』で日本を代表する演技派女優の大竹しのぶと共演したことは大きな経験となったはず。今後もミュージカルではヒロインとして歌い上げ、ドラマでは高畑や上白石姉妹のように親しみのある名女優になっていくだろう。(本 手)

 
   

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