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【ネタバレなし】映画『SLAM DUNK』はファンが観るべき作品だったか 『リアル』の連載を経た作品世界の更新

Real Sound

pixabayより(イメージ)

 映画『THE FIRST SLAM DUNK』が12月3日、公開された。公式に発表された内容に関する事前情報は少なく、断片的な映像からファンが考察を広げていた経緯もあるため、具体的なネタバレは避けながら、どんな作品だったかを考えたい。念のため、本当に何の情報も持たずに劇場に足を運びたい未見の方は、読むのを控えていただければ幸いだ。

(参考:【写真】やっぱり『SLAM DUNK』は熱い……名シーンが描かれたプレミアムグッズたち

 さて、本作については主にテレビアニメ版からのボイスキャストの変更と、その発表のタイミングについて少なくないファンから批判の声があった。その印象を引きずって劇場に行くと、特に序盤は「自分が観たかった『SLAM DUNK』はこれじゃない」という感覚になるかもしれない。

 原作者で脚本・監督を務めた井上雄彦は映画公式サイトのインタビューで、漫画家としての成長期とキャラクターの無限の可能性がシンクロしていた連載当時を振り返りながら、今の自分が映画をつくるなら「痛み」を知った現在の視点で描きたかったと語っている。その言葉通り、原作の痛快さやユーモアは抑えられており、テレビアニメ版には特段の思い入れのない筆者も「『SLAM DUNK』でこんな気持ちになるのか」という戸惑いを感じた。

 一方で、『リアル』の連載を経た『SLAM DUNK』はこういうものになるだろう、という納得感もあった。WANDSやZARDのキラキラした楽曲が似合う爽やかな物語ではなく、無音の時間と歪んだギターがドラマをつくる、ある意味では人間くさい作品として新たな側面が描かれている。その点で、すでに完成された『SLAM DUNK』という物語をそのまま美麗な映像でアニメ化するより、作品世界を更新する情報がほしかった筆者としては、素直に感動できる部分が大きかった。

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 連載開始時から『SLAM DUNK』を追いかけ、これまで何十回も読んできたが、自分は“彼ら”について何も知らなかったのだと気づかされる。それはそうだ。読者が知るのは基本的に「学校」と「部活」の時間を過ごす彼らであって、作中でそのバックグラウンドは詳細に語られていないし、現実的に考えれば膨大にある“カメラが回っていない時間”の会話も知る術がない。井上雄彦にとって『SLAM DUNK』のキャラクターたちは生身の人間に近く、物語の外でも生きているのだろう。インタビューで語っていた「連載時は描けなかった」ことが、この映画では確かに描かれていた。

 待ちに待った作品だけあって、「もっとこうしてほしかった」という要望は、ファンなら少なからずあるだろう。しかし、未見の方はせっかくならいい部分を探して観てもらいたいと思う。基本的にシリアスな空気で進む作品ではあるが、笑えるシーンもあるし、彩子さんがかわいく、流川がカッコいいので、「制作陣は誰推しだったのか」と考えてみるのも楽しい。最終盤に添えられたエピソードは、『SLAM DUNK』という作品がその躍進に大きく貢献した、現在の日本のバスケットボールシーンにつながるうれしいサプライズだった。

 『SLAM DUNK』という名前を冠した作品がこの先、また世に出ることがあるのかはわからない。いまは“THE FIRST”というタイトルが続編を示唆したものだということを願いながら、本作で更新された視点を持って原作を読み返したい。

(橋川良寛)

 
   

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