top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

ワームホールを量子コンピューター内に疑似作成することに成功

カラパイア



ワームホール」を、世界で初めて量子コンピュータ内に作成することに成功したそうだ。

 といっても、実際に時空にトンネルを開通させたわけではない。謎めいたワームホールと量子物理学のつながりを探るための擬似的なシミュレーションだが、空間と時間を混乱させることなくメッセージを送信できたという。

 その結果によるなら、「ワームホールと量子テレポーテーションは基本的に同じ現象」だと考えられるそうだ。

ワームホールと量子テレポーテーションは同じ現象である可能性

 「ワームホール」とは、時空のある一点と別の一点をつなぐトンネルのようなものだ。だからそこを通過することで、何十億光年も離れた場所に近道できるとされている。

 そんなSF映画でお馴染みのワームホールは、重力と量子という互いに相容れない2つの自然現象を結びつける鍵だと考えられている。

 2013年、重力によって生じたワームホールが量子物理学、とりわけ「量子もつれ」(長距離離れた2つの粒子がつながったままになる現象)と関係しているのではないかとの仮説が発表された。

 さらに2017年、ハーバード大学の研究者よって、この仮説はただのワームホールではなく、「通行可能なワームホール」へと拡張される。

 それによると、時空のある一点から別の一点へと一瞬で移動できるワームホールは、量子力学でいう「量子テレポーテーション」と同じ現象であるというのだ。

 量子テレポーテーションとは、量子的にもつれた2つの粒子間で、量子状態の情報が瞬時に送られるプロセスのこと。

 要は、この現象を重力の理論で説明したものがワームホールで、量子力学で説明したものが量子テレポーテーションかもしれないということだ。

photo by iStock

量子コンピュータでワームホールをシミュレーション

 量子テレポーテーション自体は、これまでにすでに実験的に実証されている。

 だが問題はワームホールだ。この構造は現時点ではあくまで仮説上のもので、実物はまだ見つかっていない。

 見つかっていないものが量子テレポーテーションと同じ現象であるかどうか、どう証明すればいいのか?

 そのブレークスルーになったのが、2015年のある研究だ。この研究では、量子コンピュータの回路にワームホールの特徴を組み込む方法が示されていた。

 そして2019年、この理論はさらに発展し、量子的にもつれた2つの量子をワームホール回路を挟んで設置する方法が考案された。

 これを利用して量子テレポーテーションを起こせば、ワームホールの力学的な特徴を計測できることができる。

 カリフォルニア工科大学のマリア・スピロプール氏をはじめとする研究チームは今回、Googleの量子プロセッサ「シカモア(Sycamore)」を使って、それを実際に行ってみたのである。

 その結果、一方の量子系に挿入された量子ビットの情報が、量子テレポーテーションによって別の量子系へと移動したことが観測された。

 重力の理論なら、このプロセスについて、量子情報が通行可能なワームホールを通って移動したと説明することができる。

 今回の実験で起きたことは、少なくともいくつかの点で、情報がワームホールを通過する際に起こることと同じだろうと考えられるそうだ。

通過可能なワームホールを研究する量子実験を描いたアートワーク / image credit:inqnet/A. Mueller (Caltech)

重力で多粒子量子現象を理解する方法

 この実験結果の意義について、「重力の視点が、それ抜きでは解明が難しい多粒子量子現象を理解する簡単な方法を提供してくれること」と、カリフォルニア工科大学のジョン・プレスキル氏は第三者の立場で語っている。

 研究チームは将来的に、より複雑な量子回路に拡張して実験を行いたいと考えている。

 本格的な量子コンピュータの実現はもう少し先のことになるかもしれないが、今後も既存の量子コンピュータを用いて、同様の実験を続けていく予定であるとのことだ。

 この研究は『Nature』(2022年11月30日付)に掲載された。

References:Physicists observe wormhole dynamics using a quantum computer / written by hiroching / edited by / parumo

TOPICS

ランキング(動画)

ジャンル