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連載「lit!」第28回:才歌、椎乃味醂、鬱P、¿?shimon……次に来る! 世界水準のサウンドを鳴らすダークなボカロ曲

Real Sound

才歌「私のせいじゃない」サムネイル

 毎週1つのテーマに関連した新作から近作をレコメンドする連載「lit!」。今週は、ボーカロイド曲の中から筆者が注目するダークな作品をお届けしたい。今年も様々なボーカロイド曲が台頭したが、とりわけ、執着心、信仰心の強い少女を主人公にしたナンバー、ブルータルなナンバーなどは、今のボーカロイド界隈の隆盛を周知させる強烈なアイコンとなった。本稿ではサウンド、リリック、世界観、テンポ感をはじめ、今のボーカロイド界隈でヒットする要素を持っている4曲を紹介したい。

(関連:supercellからwowaka&ハチ、DECO*27、じん、バルーン、稲葉曇まで VOCAROCKの変遷と再興するボカロシーンでの存在感

■才歌「私のせいじゃない」

 作詞作曲、イラスト、動画のすべてを才歌自身で手がけた「私のせいじゃない」。狂気をまとったピアノの音色と可不、歌愛ユキの音声合成ソフトウェアによる歌声で不穏な空気が耳底に刷り込まれていく。〈本能になっていく〉のリピートが幻想の世界へと誘い、解放的な印象を残す。その一方で、2番目からの〈失敗した〉のリピートでは、自我を保てない操り人形のような人物をイメージさせるなど、常に感情と無感情の間を浮遊しているようなメロディライン。ダンスミュージックの要素に加え、サビなどで奏でるリズミカルで煌びやかなシンセやピアノの音色も印象に強く残る。

■椎乃味醂「知っちゃった」

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 「知っちゃった」は今年の秋に開催された『The VOCALOID Collection(ボカコレ)』のTOP100の3位に浮上した。リリックの大半はポエトリーリーディング風の歌唱となっており、潤沢な情報がコンパクトに収まっているアップテンポなダンスミュージック。直線をなぞるように延々と言葉が放たれていくフレーズは、ボカロP・れるりりのアンセム「脳漿炸裂ガール」にあった捲し立てる高速フレーズを彷彿とさせる。かつての高速ボカロ曲を想起させる一方で、洋楽を意識したエスニックサウンドが取り入れられるなど、令和の時代の新しいボーカロイド曲の波を感じさせる。

■鬱P「ララララフレシア」

 1曲に様々な音楽ジャンルを取り入れるK-POPのように、アラビアの民族音楽、ロック、パンク、ハードコア等を多用することで、カメレオンのような表情を見せる「ララララフレシア」。花言葉が“夢現(ゆめうつつ)”のラフレシアのことを歌っており、上述した「私のせいじゃない」と同様に、神秘的な世界へと聴き手を誘導する。ボカロP・なきその「ド屑」など、MVの主人公となる少女が高圧的な態度を取りがちな昨今のボーカロイド曲と共通しているのが、ラフレシアと関連するMVの少女が2番で吐き捨てる〈それが出来りゃ苦労は無え〉という暴言のようなリリック。世界の最新トレンドを汲んだ実験的要素の強いサウンドはドープだ。

■¿?shimon「ルシファー」

 7月29日に投稿されたボーカロイドの原曲とは大きく印象が異なるセルフカバーバージョン。重低音の効いた2番からは、ラップのリリックに変更され、奈落の底に突き落とされるようなスリル感が待っている。喚き声やチャーチの鐘といったSEに加えて、¿?shimonならではのダイナミックに跳ねる音像。まさに興奮と恍惚へ導く脳内麻薬のようなマッシブな1曲と言える。ヒップホップ、R&Bが似合うと同時に、繊細なニュアンスまで再現するエモーショナルなボーカルで聴き手の心をとらえる。自身の魅せ方をわかっているシンガーとしても、非常に期待値の高いボカロPだ。

 AメロとBメロといったメロディフレーズから逸脱したエキセントリックな展開を繰り広げたり、様々なジャンルを組み合わせるなど、心奥を操るダークで魅力的なボーカロイド曲が日々誕生している昨今。ボーカロイド曲は昔から実験的なジャンルとして存在していた。そして今も、世界の最新トレンドを吸収しながら成長しているのは、上記の4曲を一聴すれば明瞭だろう。(小町碧音)

 
   

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