
人類はまだ月への帰還を果たしていないが、そのための準備は着々と進んでいる。
米テキサス州のベンチャー企業「ICON」が遂行する「プロジェクト・オリンパス」のために、NASAが5720万ドル(約77億円)の資金を提供したそうだ。
その目的は、ICON社の3Dプリンター技術で月面基地を作ること。アルテミス計画が順調に進む前提の下、2026年までに月面住居の準備を整え、NASAがいつでも使用できるようにする予定であるとのことだ。
3Dプリンターで人類初の月面基地建設
もしも本気で月を人類の前哨基地にする気ならば、耐久性に優れ、かつ軽量な月面住居が不可欠だ。この責任重大なミッションについて、ICON社のジェイソン・バラードCEOはこう語る。責任の重さを感じています。私たちは自分たちのためだけにやっているのではありません」「私たちは人類に異世界で建設する力を与えようとしていますICON社がNASAに最終的に届ける製品は、人類初の異世界での建築物になるだろうとのこと。「それは、ひときわ特別な達成になるでしょう」とバラードCEOは言う。
3D Printing on the Moon and Beyond for NASA | Project Olympus – Off-world Construction | ICON
プロジェクト・オリンパス
ICON社は、3Dプリンター技術で地球上に建物を建設する企業だが、以前よりその技術を宇宙で活かしたいと希望していた。そして2020年に発表されたのが、月面での住宅建設研究開発プロジェクト「プロジェクト・オリンパス(Project Olympus)」だ。

同社はまた、3Dプリンターによる火星コロニー建設をも視野に入れているようだ。
こうしたプロジェクトで肝心なのは、地球の資材を月に持ち込むのではなく、月の塵や瓦礫など、現地にある材料で建設できるようにすることだ。
これが重要なのは、月で建設するたびに毎回地球から資材を運び込むのでは、とんでもなく効率が悪いからだ。
バラードCEOによれば、月のレゴリスから建物を作れれば、人類が月に長期滞在することも可能になるとのことだ。
「もし、月面居住地や月面基地を計画したときに、すべてを持ち込まねばならないとしたら、新しいものを作ろうとするたびに1億ドルかかるでしょう」とバラードCEOは説明する。
「ですが、着陸パッド、道路、居住地など、現地にある材料でほぼすべてを作れれば、おそらく私たちがほかに考えつくどんな方法より、2、3桁安く恒久的な月面基地を建設できることでしょう」
References:ICON To Develop Lunar Surface Construction System With $57.2 Million NASA Award / 3D printing firm ICON wins NASA contract to build on moon – Axios Austin / written by hiroching / edited by / parumo