top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

上品な老武士の探し物「“江戸のしばやの土産”はないか?」

幻冬舎ゴールドライフオンライン

「東錦絵」に惚れた男、大倉屋松七郎の活躍。江戸中期の人々の暮らしや生き様が垣間見える長編歴史エンタメ小説!※本記事は、渋谷松雄氏の小説『大江戸弘メ帖 第一編 東錦絵』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

二丁目

羽左衛門の油見世では『艶顔香』と名付けた髪油を売っていた。全く売れなかった。羽左衛門は顔に痘痕(あばた)があり、背の低い小男で、“魚のような顔だ”といわれた男である。とても「艶顔」ではなかった。誰も信用しなかったのである。

羽左衛門には芸の力はあったが役者としての華がなかった。暗い。

“油見世折ふしいてははやらせる”

自分の見世に、役者が時々来て、客に挨拶して、見世を繁盛させるという川柳である。

広告の後にも続きます

「どうもこの見世では、川柳のようにはいきませんナ」と、健三が常々言っていた。

「羽左衛門という役者の見世だ。羽左衛門の物を売る」

それが九代目羽左衛門の考えだった。

しかし、役者に関する物を売るのは中村座の油見世も同じである。中村座は、四代目市川團十郎の牙城ともいうべき小屋であった。四代目市川團十郎は、立役、極上上吉の一番の評価で、木場の親玉といわれた。

中村座の油見世では、市川團十郎の一門、雷蔵、高麗蔵、幸四郎、八百蔵、伝九郎、七三郎、などの役者に関する日用品、衣料品、化粧品を売った。

羽左衛門と團十郎の、評判と人気の差が、見世の売り上げに出ていた。

客という教師

  • 1
  • 2

TOPICS

ジャンル