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友人と苦しみを分かち合えない…悩む青年を励ました「一言」

幻冬舎ゴールドライフオンライン

ある日文通サイトにアクセスすると…日本と北アイルランドで育まれた、青年2人の友情物語。※本記事は、オハラ ポテト氏の小説『未来旅行記 この手紙を君へ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

第四章 同情と同苦の違い

就職活動を終えた私は、アイルランド共和国に留学していた時知り合った、ピーター・オサリバンに連絡を取った。ピーターは、優しい少年のようなあどけなさの残る壮年であった。彼は長年、精神科医として勤めてきた。私の心身の状態をいつも心配していてくれていた。そんなピーターに私はあるお願いをした。

「ピーター、誰か友達の中に、北アイルランドのベルファストに住んでいる人いる?」と尋ねるとピーターは、ショーン・オハラという、ベルファスト在住の、生粋の北アイルランド人を紹介してくれた。

ショーンはふっくらとした世話好きの穏やかな巨人だった。彼も私たちと同じ国際NGOの一員として、北アイルランドの地で生きていた。彼の仕事は作家であった。しかし彼もまた、北アイルランド紛争時に、お兄さんを殺害された過去があった。ロバートと同じような境遇の人は、北アイルランドでは珍しくなかったようである。

私がピーターからショーンを紹介してもらったのには訳があった。私が北アイルランドのベルファストまで、ロバートに会いに行くまでの間、ロバートの近くで友達になって支えてくれる人を探していたのである。

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ロバートがお酒で寂しさを紛らわしているのを知った私は、彼が間違っても自傷行為やそれ以上のことをしないように、身近に彼を見守ってくれる話し相手を探していたのだ。幸か不幸か、ショーンはロバートと同じような過去を持っていたことから、彼ならロバートの心の痛みや苦しみに同情ではなく、同じように苦しむ、同苦ができる適任者だと私は思った。

また後で分かったことだが、ショーンの亡くなったお父さんと、ロバートの亡くなったお爺(じい)さんが生前、友人同士だったことが二人の話から分かった。赤の他人だと思っていた人同士が、実は深い繋がりがあったのだ。世間は狭いなと、ユーラシア大陸の極東で私は思った。

当時私が悩んでいたことの一つが、同苦という心情だ。ロバートと同じ経験をしていない私は、彼の苦しみを我がこととして、痛みを負いながら苦しむ同苦までは届かず、ただの同情に甘んじていたのではないかと。故にショーンに頼った部分があった。この私の悩みを井戸に伝えると、意外な答えが彼から返ってきた。

「田中さん、確かに私も田中さんもロバートさんと同じ経験をしていません。けれども田中さんが今こうして悩んでいること自体が、すでに同情の域を超えて、同苦できている証拠なのですよ! 自信を持って下さい! またロバートさんが経験していないことで、田中さんが経験していることだってあると思いますよ。そういう経験をロバートさんに少しでも還元(かんげん)して、元気づけることが、私は田中さんの使命だと思いますよ!」

井戸の意外な返事に、私は勇気が湧(わ)いた。

こうして私の新たな挑戦が始まった。職場では信頼されるように一生懸命働き、また新たな人間関係の構築(こうちく)のために、懇親(こんしん)会を提案して、幹事をやらせてもらったりもした。こうして着実に信頼を勝ち取っていった。

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