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すずらん通りの名物居酒屋!おかみが昔ながらの流儀にこだわるワケ

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、株式会社メイコー・エンタプライズ代表取締役・佐々木明廣氏の書籍『居酒屋 千夜一夜物語』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

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第三章 東京

一味とめ

(二)おばちゃんのこと 

おばちゃんには昔の流儀を一切変えようとしない頑固さがあった。

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例えばソロバンである。どんなに混んでいてもソロバンで勘定するのを変えようとしない。当然客は待たされる。更に、酒や醤油がソロバンにかかると玉が走らなくなるのは当然だがそれでも計算機に替えようとしない。

また、仕入れも仕切っているので座っている横の製造年度もわからない古びた冷蔵庫の上には領収書や請求書など、得体の知れない紙が微妙なバランスで山積みされている。そして、私は微振計と言っていたが冷蔵庫のコンプレッサーが始動する度に一気に崩れ落ちることもしばしばであった。

一番痛い目にあったのは、仕切り障子の桟や壁一面に画鋲留めされたメニューの紙がその裏側にある洗濯機のガタガタいう振動でしばしば剥がれ落ち、画鋲が尻に刺さったことであった。飲み仲間を含めて何度悲鳴を上げたことであろうか。

だが、おばちゃんの頑固さは単なる一人よがりの頑固さではなく、五十年来通い続けてくれているお客様に対し如何に全国の旨いものを出して喜んで貰うかに徹していることを私はよく知っていた。新参者の私などはその恩恵を受けてただ楽しませて貰っているだけなのだ。そ

の様な店故に常連客も多く、またその評判を聞きつけたマスコミの取材陣も殺到するすずらん通りでは知る人ぞ知る名物居酒屋であった。

しかしながら、さすがのおばちゃんも病魔には勝てず肺に大きな疾患を患って医者に手術か薬事療法か選択を迫られる事態が発生した。

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