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いいなと思った彼が離婚調停中だった!しかも、離婚原因は特にナシって怪しいけど…

東京カレンダー

空前のゴルフブームが到来している今、ゴルフは男女の出会いの場としても有効だ。

30歳を目前に、いい出会いがなく焦りを感じていた森脇那月(29)も、ゴルフを始めたが…。

東京のゴルフコミュニティーに、ヒエラルキーが存在することを知る。

同じ思惑を抱く女性たちが集うこのコミュニティーで、那月は最後まで勝ち抜き、理想の男性を捕まえることはできるのか―。

◆これまでのあらすじ

那月(29)は、前職の同期・麻由子の誘いでゴルフに行くことに。そこで出会ったふたりの男性は、ゴルフの腕もよく、高スペックの魅力的な男性だった。しかし、麻由子が好意を寄せる康介が、実は離婚調停中だと聞き…。

▶前回:「イイ男がいない」と嘆く29歳女が見つけた、最高の出会いの場とは



Vol.2 ゴルフで広がる“新しい世界”


「康介さんが離婚調停中…?」

予想もしていなかった麻由子の言葉を改めて確認するかのように、私は思わず同じ言葉をそのまま繰り返す。

「うん。康介さんは別れたいけど、奥さんの方がなかなか首を縦に振らないからって…折り合い付けるのに時間がかかってるみたい」

奥さんは、康介さんと慶應時代の同級生で、学生当時から交際をスタートさせ、結婚。交際期間も含めると、10年以上の付き合いだそうだ。

学生時代に仲の良かった友人メンバーのひとりで、その中には大輝さんも含まれるらしい。

たまたまそういう話にならなかったから、特に切り出されなかっただけで、決して隠されていた訳ではないのだろう。

ただ、てっきり独身男女の集まりだと思っていたから、康介さんが既婚者だったなんて思いも寄らず、正直驚いた。

「…麻由子は、康介さんから直接聞いたの?」

いつもあっけらかんとしている麻由子が、珍しく不安げに頷く。

「ゴルフで出会って、私もすぐにいいなと思ったんだよね。

最初は結婚してるのも知らなくて、勝手に、向こうもいいと思ってくれてるのかなって思ってたけど、勘違いだったみたい」

「離婚って、麻由子とのことを考えて、ってことは…」

「出会った頃からずっとそうだったみたいだから、それが理由ではないことは確か。

スペック満点で、優しくて、ゴルフという共通の趣味で出会って…素敵だ!って思うのはきっと私だけじゃないと思うの。そんなの、モテるに決まってるよね」

離婚したってすぐ次にいけるだろうし、と皮肉っぽく麻由子は笑ったが、それでも、康介さんを諦めようとしているようには見えなかった。

「麻由子はどうしたいの?」

「ステキだなって思う気持ちに変わりはない。だから、諦めないよ」

麻由子らしい前向きな言葉を聞けて、彼女の想いを応援したいと思いつつも、康介さんに対する少しの違和感が、まだ胸にチクっと刺さっていた。

― 離婚調停中って、なんでだろう…。

長い時間を共に過ごし、お互いへの理解も深まっての結婚だったはずなのに、このタイミングで離婚という決断をするなんて…なにがあったんだろうと、少し気掛かりだった。




指定された店は、麻布十番の老舗中華料理店『登龍』。

芸能人御用達だとかいって、名前は聞いたことがあったが、行くのは初めてだ。

良くも悪くも“彼ららしい”店のチョイスだと、麻由子は笑っていた。

私もうまく説明できないが、“彼ららしい”という麻由子の表現が、どこかしっくりきた。

お店に入り、古川大輝さんの名前で予約していると伝えると、お待ち合わせのお客様です、と店員に案内される。ふたりはもう到着しているらしい。

4名掛けの円卓テーブルだ。

ゴルフ場でふたりを見送った際は、ドレスコードでジャケットスタイルだったが、ふたりとも羽織っていたジャケットを脱いで、リラックスしたような様子だ。

お疲れさま、と声を掛けられ、案内された席に着く。



「それじゃあ、乾杯!」

全員の生ビールが揃ったところで、大輝さんの発声を合図に、グラスを寄せ合う。

ゴルフ場でのビールも捨て難いのだが、今日は私以外帰りの運転があったため、昼食時のビールはお預けだった。

心地よく疲れた身体に染み渡り、不思議とゴルフの後のビールはいつもより美味しく感じる。

「コースだとちょっと重たそうだから、アラカルトでいいかな?」

苦手なものはない?適当に選ぶねと、大輝さんがメニューを見て、店員に注文をしている。ゴルフ場でも感じたが、こういう時の手際の良さが好印象だ。

隣に座る大輝さんの手元のメニューを横目で少し覗いてみると、ぱっと目に入った餃子が、なんと2,000円オーバー…。

― ふたりはこういう高級店にさらっと来るんだろうな。ゴルフが趣味っていう男性、やっぱりお金持ってる…。



「おふたりはよく、このお店にいらっしゃるんですか?」

麻由子が切り出す。

「よく来るよ。大輝がすぐ近くに住んでるのもあって、学生時代の仲いいメンバーで集まって飲むときは、麻布十番が結構多いかな」

― それって、麻由子が言ってた、康介さんの奥さんも…?

麻由子の話を思い出したのも束の間、大輝さんがその言葉にからかうように応える。

「まあ、康介のせいで、当時のメンバー全員は集まれなくなったけどね」

私が事情を知らないと思ったのか、すぐに大輝さんが付け加える。

「康介、今離婚調停中なの。学生時代からずっと仲良かったメンバーの中に奥さんがいてね。もうその頃に戻れないの、ちょっと寂しいんだよね」

「そこは申し訳ないと思ってるよ」

“離婚”と聞くと、思わず重く受け止めてしまっていたが、お互い冗談っぽく話している様子を見ていると、さほど深刻そうな雰囲気ではないようだった。

食事が進んできたころ、康介さんから、ちょっといい紹興酒でも入れようと提案がある。

皆少しずつお酒も回ってきているような様子で、ここは無礼講だと、私は、思い切って康介さんに投げかけた。

「…どうして、奥さんと別れちゃうんですか?」

「うーん、難しい質問だね。…長い時間を共にしていく中で、お互い変わっちゃうこともある、っていう感じかな?」

なんだかはぐらかされたような気もしたけど、不思議とその言葉が全てであるような気もした。

話を聞く限り、決定的な離婚に結び付く明確な出来事があった訳ではなさそうだが、なにが“離婚”という決断を促してしまったのだろうか…。

麻由子もどこか、納得していないような表情に見えた。


食事を終えたあと、麻由子は康介さんと家の方面が一緒だということで、タクシーに相乗りして帰っていった。



「大輝さんは、歩いて帰れる距離なんですっけ?」

「すぐ近くだよ。那月ちゃんがもしよかったら、行きつけのバーが近くにあるんだけど、もう一軒付き合ってくれない?」

大輝さんの誘いに、私はもちろん乗った。



『登龍』から歩いて5分程の場所にあるバーに辿り着く。入り口は少し入りづらい雰囲気はあるが、いざ店内に入ると、バーといっても広々として開放感がある素敵な店だ。

カウンター席に案内され、大輝さんの左隣に座る。

メニューを見てなにを頼もうかと悩んでいると、大輝さんに、季節のフルーツカクテルが美味しいよ、と勧められる。

その言葉で、他の女性ともこのお店来てるのかな…なんて想像してしまったが、ここは大輝さんの提案に乗る。

「わあ、キレイ…」

キラキラと艶やかなシャインマスカットが目を引く、シャンパンベースのカクテルだ。

大輝さんが少しこちらに体を向け、小さく、乾杯と呟き、グラスに口をつける。

「康介と麻由子ちゃん、どう思う?」

「…いろいろ事情を知らなかったので、てっきりふたりはいい感じなんだと思ってました」

「そうだよね。でもね、これまでも康介から麻由子ちゃんの話は聞いてて、彼女のこと気になっているのは本当だと思う」

私にもそう見えた。麻由子が気になっているというのと同じくらい、康介さんも麻由子に興味がある。そう感じられた。

「…康介さん、離婚の明確な原因…みたいなものって、本当にないんですか…?」

「他の誰かを好きになったとか、今の奥さんのことを嫌いになったとはではないみたい。でも…」

奥さんと出会って恋に落ちた学生時代には見たこともなかった、新しい世界を知ってしまったんだと思う。

大輝さんはそう言った。

確かにそうだ。社会に出て、行く場所も出会う人も変わった。

必ずしもすべてが良くなったという意味ではないが、世界が広がった。

その中で、価値観が変わったり、面白みを見いだすもの、興味を抱く対象が変わることは、確かにあると思う。

相手は学生時代に出会った人だというから、そういった変化の中で、奥さんとの生活に区切りをつけたいと思うようになっていったという意味も、決して理解できないことはなかった。

私も、今日のたった1日で、新しい世界に足を踏み入れられたような気さえしたのだから…。

「離婚するなんて聞いたら、不安に思うかもしれないけど、康介も悪いやつじゃないし、幸せになってほしいんだよね。だから勝手なことだけど、麻由子ちゃんとうまくいったらいいなと思ってるんだ」

「私も、麻由子がその未来を望むなら、応援したいと思ってます」

そう伝えると、嬉しそうに、はにかんだ笑顔が向けられて、友だち想いの優しい人だなと思った。

「大輝さんは、いつからゴルフ始めたんですか?」

「社会人になってからだね、職場の上司に連れられて。今は自分で会社やってるから、お付き合いでやる機会も増えたかな」

「私も社会人になって、たまたま上司が学生時代ゴルフ部で…それで全員まずは打ちっぱなしに連れて行かれて、そのあと半年くらいでコースデビューしました」

経験してきた年数でいうと、大輝さんとそこまで変わらない。

今日がとても楽しくて、皆のようにもっとうまくなりたいと思うと、始めた当初からもっと熱心に取り組んでいればよかった、そう後悔せずにはいられなかった。



「もしこれを機に面白いと思えたなら、これからまた始めればいいんだよ。遅いなんてことはないし、僕がいくらでも連れて行くから」

そう言って、大輝さんがスマホを差し出してある女性のインスタを見せてきた。

「そうだ!今度、このエリナって子が主催するコンペがあるんだけど、一緒にどう?」

大輝さんのスマホを覗くと、フォロワー4万人を超える美女が写っていた。

有名ゴルフコースで、お洒落なゴルフウェアに身を包んだ写真がたくさんあがっている。まるで芸能人のようだ。

「わぁ、素敵な人ですね。参加したいです」

私は二つ返事で答える。

だが、このコンペをきっかけに、私はゴルフ界の華やかな世界に足を踏み入れ、酸いも甘いも知っていくことになるのだった。


▶前回:「イイ男がいない」と嘆く29歳女が見つけた、最高の出会いの場とは

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ゴルフの腕が上がるとともに増える、インスタのフォロワー数。そして一通のDMが…


 
   

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