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『SLAM DUNK』が描いたのは「基本」の大切さだった 桜木花道が最後に放った“普通のシュート”の意味

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■桜木の最後のシュートには何が込められていたか

※以下、ネタバレ注意。

 さて、それを踏まえたうえで考えてみれば、『SLAM DUNK』という物語の最後の最後で、桜木花道が見せた“大技”が、(タイトルにもなっている)「ダンク」ではなかった理由もぼんやりとだが見えてはこないだろうか。

 インターハイ2回戦――湘北高校vs山王工業の試合。残り時間は約1秒。湘北のエース・流川楓は、ふだんは反りの合わない(だが、心の底では認めてもいる)桜木花道にボールを託そうとする。一方の桜木は、以前、赤木に叩き込まれたあの言葉を思い出していた。

「左手はそえるだけ…」

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 流川からの絶妙なパス。キャッチする桜木。静まりかえる場内。そして、桜木は美しいフォームでジャンプ・シュートを放ち、それが結果的に湘北チームの決勝点となるのだった……。

 もちろん、ここで、流川からのパスを受けた桜木が豪快なダンクシュートを決める、というクライマックスの描き方もアリだろう。物語を盛り上げる、という意味では、むしろそちらのほうが自然とさえいえるかもしれない。しかし、やはり私は、『SLAM DUNK』の最後を飾るのは、この“主人公の基礎練習の集大成”ともいうべき“普通の”ジャンプ・シュートしかなかったように思う。

 なぜならば、あらためていうまでもなくこのシュートは、桜木と彼の仲間たちが想いをつないだ結果であり、また、選ばれた一握りの天才ではなく、努力次第で誰にでも放つことのできる、いわば“庶民の必殺技”でもあるからだ。

 そう、何事においても、(かつて赤木がいったように)「基本を知らん奴は何もできやしねー」のである。そして、人はひとりでは何もできないのである。そのことを、あの赤い髪の元不良少年は、我々読者に、“2万本のシュート練習の成果”という形で見せてくれたのではないだろうか。

※本文中に出てくる単行本の巻数表記は、ジャンプ・コミックス版のものです。(筆者)

(島田一志)

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