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【パラスポーツと教育】大切なのは柔軟な考えと工夫 特別支援学校での車いすバスケ体験

パラサポWEB

特別支援教育に長年携わり、2022年4月に志村学園に着任した並木信治校長も、子どもたちが競技を大いに楽しんで体験できたことに感嘆の声を上げました。

「車いすバスケットボールの場合は、プレーする人には中途障がいの人が多い、上半身をしっかり使う競技というイメージがあり、重度の肢体不自由の子が競技体験までするのは難しいのではないかと初めは思っていました。

しかし体験を進める中で、自分から「やりたい」と意思表示していく姿に、私自身も「工夫をすればこんなに体験の幅が広がるんだ」と衝撃を受けました」(並木校長)

競技用車いすに乗って身を乗り出し、自分からボールに触れようとする子どもたちの積極的な姿勢は、スポーツの楽しさをストレートに表現していました。制約がある中でもまずはやってみようとチャレンジしたことは、きっと自信につながったことでしょう。

授業で行うパラスポーツは、もっと柔軟でいい

子どもたちに優しく語りかける並木信治校長

今回のあすチャレ!スクールで重要なポイントとなった、工夫をして子どもたちに合った方法をつくるという視点。この背景には、特別支援学校でのパラスポーツ実践の過程で磨かれてきた考え方と通じるものがあります。

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「特別支援学校は、知的障がいのある児童・生徒が多く在籍しており、肢体不自由と知的障がいなど複数の障がいがある子も多くいます。そうした事情から、実はオリンピック・パラリンピック教育が推進される前から、東京の特別支援学校ではハンドサッカーという競技が考案され、よく取り組まれています。ハンドサッカーにはさまざまなポジションがあり、意思表示がボールを投げるという動作に連動するようになっているため、自分で動けるか動けないかに関わらず一つのチームで一緒にプレーできる競技です。

障がいが重い子もプレーできるパラスポーツだとボッチャがありますが、知的障がいのある児童・生徒にとっては、ルールを理解しそれに沿ってプレーするのが難しい場合もあり、東京パラリンピック以前はあまり浸透していませんでした」(並木校長)

ただ、東京2020パラリンピックを契機にボッチャの知名度が大きく上がったこともあり、特別支援学校の中でも取り組む学校が増えたそう。その過程でも、子どもたちに合わせて柔軟に対応する姿勢がポイントになりました。

「楽しめることを大事にして、新しいルールを取り入れるなど、工夫を施した実践が増えました。もちろん大会などでは正式なルールに則ることが前提になりますが、授業であればルールを厳格に守ることよりも、みんなが取り組める、楽しめるやり方を考えて行うことに重きを置くことで、スポーツの楽しさやみんなで一つのことに取り組むよさを感じることができます。特別支援学校で授業に取り入れる場合には、ルールについてはもっと柔軟に考えてもいいのではないでしょうか。オリパラ教育の推進でいろんな体験、知識が蓄積されたことで、こうした新しいチャレンジの幅が広がってきたように思います」(並木校長)

志村学園では、具体的なカリキュラムは検討中であるものの、今後もパラスポーツを子どもたちが新しい挑戦をしていくひとつのきっかけにしたいと考えているそうです。

いろんな工夫をすることが、インクルーシブな社会のヒントになる

一人ひとりが多様であるという前提に立った授業のデザインが、子どもたちの笑顔と豊かな学びにつながります

一人ひとり異なる子どもたちに向き合ってきた特別支援教育の教育実践の中で磨かれてきた考え方は、学校の枠を超えた大きな示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

「本校の教育活動では、『子どもたちの特性に応じた教育をしていく』ということを教職員で共有しています。これは特別支援学校のみならず、どの学校でも大切な視点です。

そして、障がいの種類や子どもたちの背景が一人ひとり異なるなかで、子どもたちに何を伝えていくのかを考えることが、やはり大事です。体育であれば、私は教員に「この子たちにとっての体育とは何だと思いますか?」と問いかけるようにしています。例えば先天的に障がいのある肢体不自由の子どもたちにとっては、自分の体を意識し、動かせる部分を積極的に動かそうとすることや、今まで意識したことのなかった動きに気づくことが自分自身のボディイメージをもつ機会となります」(並木校長)

教科カリキュラムによる枠組みにとらわれず、広い視野で柔軟に考えることは、多くの教育現場で普遍的に求められます。いわゆる「普通校」が大きな割合を占める日本の学校では、パラスポーツは「健常」の子どもたちが「障がい」への理解を深めるきっかけ、というイメージが強いですが、「それがすべてというわけではないんです」と並木校長は語ります。

「人は障がいがあるか、ないか、という二択ではなく、誰しもいろいろな個性を持っていてグラデーションのようになっています。ある一つの競技をみんなで楽しむためにはどんな工夫をすればいいか考えること、その「いろいろな工夫」をすることが大事であり、それがすなわち、「共に社会を築いていく」ということのヒントになっているのです。そうした考えのもと、子どもたちにはこれからも、真剣に取り組み努力している人からメッセージを受け取れる機会をつくっていきたいと思います」(並木校長)

「インクルーシブ教育」という言葉が注目され、教育制度への問い直しが続く今、特別支援学校での出前授業とその背景からは、共生社会の実現につながる考え方と豊かな可能性が感じられました。

あすチャレ!スクールについてはこちら→https://www.parasapo.tokyo/asuchalle/school/

text by Ayako Takeuchi
edited by Parasapo
photo by Haruo Wanibe

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