
死に向き合い、もがきながらも、生きる意味を探す少年の姿を描いた青春小説。※本記事は、EIKO氏の小説『見上げれば空はブルー』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
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そら美が死んだ日
綾乃の家は駅前から少し離れたところで小さな化粧品店を営んでいる。綾乃のお父さんは綾乃が小さい時、交通事故で亡くなった。それから美容部員だった綾乃のお母さんが一人で始めたお店だった。
綾乃の家まで来ると、自転車を店の横の路地に並べて置いた。いつものように店に顔を出し、レジ前にいるおばさんに声をかけた。
「おばさん、綾乃ちゃんいる?」
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おばさんは赤い花柄のワンピースの上から半袖の白衣を着ていた。綺麗にお化粧していた顔に汗は出ていない。入り口の自動ドアーが開くとクーラーの冷たい風がスーと純太の体をなでた。
「ごめんね、今、音楽教室。上がって待っていたら、もう帰ると思うよ」と親切に声をかけてくれた。綾乃は六歳の時からフルートを習っていた。
聡と純太は互いに顔を見合わせ、
「じゃあ、良いです」と聡が答えた。
「お前んちに行こう」
聡がサドルに尻を乗せた時に行先が決まった。