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“天才肌”の印象を抱かせた明大時代とは異なる姿。苦難の高山俊が阪神でもう一度輝くためのカギは?

THE DIGEST

“天才肌”の印象を抱かせた明大時代とは異なる姿。苦難の高山俊が阪神でもう一度輝くためのカギは?

 15年ぶりに岡田彰布監督が指揮を執る阪神。2022年シーズンは開幕9連敗と最悪のスタートを切りながらも、最終的にはAクラスの3位まで浮上しただけに、17年前のリーグ制覇を知る指揮官の再任で18年ぶりの優勝にかかる期待も大きい。
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 そんなチームで復活が期待される存在と言えば、高山俊ではないだろうか。

 プロ入りまでの彼はいわゆる“エリート街道”を歩んできた。日大三高では、強力打線の中軸を担って3年夏に甲子園優勝。進学した明治大学では入学直後からヒットを量産。そして東京六大学史上最多となる通算131安打をマーク。名実ともにアマチュア球界屈指の巧打者として名を刻んだ。

 2015年のドラフト会議では、くじ引きの目玉となり、阪神とヤクルトから1位指名を受け、金本知憲監督(当時)が当たりくじを引き当てて阪神に入団。余談だが、外れくじを当たりだと勘違いしたヤクルト真中満監督(当時)のド派手なガッツボーズは今でもドラフト史を振り返る際に“迷シーン”として紹介される。

 伝統の縦ジマのユニホームを身にまとった高山は、プロ入り後も1年目は周囲の小さくない期待に応えた。134試合に出場して136安打、8本塁打、65打点、打率.275と見事な成績を残し、新人王にも輝いた。

 しかし、高山のプロ野球人生が順調だったのは、現時点でルーキーイヤーだけだったと言わざるを得ない。2年目は82安打、3年目は22安打と徐々に成績は低迷。4年目の2019年には105試合に出場して73安打と復活の兆しを見せたものの、以降の3年は二軍暮らしが続いている。

 何よりも心配なのが、二軍でも結果を残せていない点だ。過去3年間の二軍での主な打撃成績を改めて並べてみると以下のようになっている。
 2020年:出場42試合、38安打、2本塁打、11打点、1盗塁、打率.248
2021年:出場95試合、65安打3本塁打23打点8盗塁、打率.202
2022年:出場41試合、27安打、0本塁打、12打点、2盗塁、打率.248

 春季キャンプ、そしてオープン戦では好調を窺わせる。しかし、いざシーズンが始まると結果が出ない。そんな3年間だったのがよく分かるだろう。

 これを見ると、高山がプロ入り後に大きな壁にぶつかったという印象を受けるかもしれないが、実はプロ入り前からも不安要素があった。筆者は大学最終学年となる直前の3年生の冬に当時寄稿していた雑誌の取材で話を聞いたのだが、すでにリーグ戦通算100安打を記録していながらも、長時間に渡ったインタビューで自信のある発言があまり聞かれなかったのをよく覚えている。

 当時の彼は目に見える結果を残しながらも、2年秋までは木製バットに対応できている感覚はなかったという。この時に筆者は外から見て感じていた“天才肌”とは全く異なる印象を持った。外野の守備についても中学時代までは内野とピッチャーだったために、「自信はない」と話していた。プロでも外野守備で苦労している姿を見る度に、この時の話をよく思い出す。 ここ数年の高山の打撃を見ていて感じるのは、打撃フォームがよく変わるという点だ。

 一時はチームの先輩だった福留孝介のような構えにしていたが、いまは右足の上げ方も大きくなったり、小さくなったりを繰り返しているように見える。打撃フォームの変化自体は他の選手にもよくあるが、結果がついてこないなかで試行錯誤を繰り返すのは、やはり自分の中でしっくりこない部分があるのではないだろうか。

 無論、「打てていた頃のフォームに戻せば良いのでは」というのは簡単だ。しかし、身体の状態は当時とは異なっており、言うほど単純な話ではない。3年間もの長期間で結果が出ないのは、やはり根本的な何かが大きく狂っていると言えるだろう。

 ただ、これだけの状況でもトレードに出されずに、チームに残り続けているというのは、逆に球団からの期待の表れとも言える。そんな高山にとって大きな追い風となるのが岡田監督の就任である。

 岡田監督は解説者時代にも、常に高山について「このまま終わる選手ではない」と話しており、この秋季練習でも直接指導を行なうなど高い期待を寄せているのが窺える。そして、もう1人大きなプラスになりそうなのが新しく打撃コーチに就任した今岡真訪コーチの存在だ。
  今岡コーチも野村克也監督時代の3年間は高山ほどではないものの成績を落とし、表立って非難されることも多かった。だが、2002年に星野仙一監督が就任するとトップバッターとして鮮やかに復活。さらに岡田監督のもとでも2005年には147打点をマークして打点王に輝くなどチームの優勝に大きく貢献した。

 今岡コーチも高山も打撃に関しては天才的なものがあると言われ続けてきた点は共通している。そういう意味でも苦難の時代を経て復活した同コーチの経験が、高山の復活の後押しとなり得る。

 また、チームの外野陣は近本光司が不動のレギュラーとなっているものの、佐藤輝明はサードへのコンバートの可能性があり、それ以外に実績がある選手は島田海吏くらいしか見当たらない。無論、今秋のドラフトで1位指名された森下翔太への期待も大きいが、大学時代のバッティングを見る限り、このルーキーが1年目からレギュラー争いに食い込むというのは考えづらい。そうした台所事情も考えれば、高山の入る余地はまだまだあるのではないだろうか。

 岡田監督のもとで鮮やかな復活を果たした高山がチームを優勝に導く――。そんな姿を期待している阪神ファンも多いはずだ。来年に大学時代、そしてルーキー時代に見せた輝きを取り戻してくれると願いながら一挙手一投足を見つめたい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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