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【小説】卵と両親。何の繋がりもない二つの関係は…

幻冬舎ゴールドライフオンライン

「日常が突然に崩れていく」原因不明の病気をめぐる様々な人間模様と愛の物語。※本記事は、川端ケイ氏の小説『卵の殻が割れなくて』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

第二章

クリニックでこの事件を話したら「親御さんに関してのこだわりではないでしょうか」と言われ両親について考えるようにと言われた。卵と両親。何の繋がりもない二つ。しかし、考えてみることにする。

帰りにクリニックで会った磯部さんと夕飯を食べた。夏も終わったが磯部さんはまだ無職だった。酒類のない店のほうがいいので、ファミレスに行った。私はハンバーグで、磯部さんはカレーライスを頼んだ。

「就職難しいのね」と言う私に、「まあ、僕も選り好みが激しいのかも。それに35だから」と答える。

「卵はどうなったの?」と聞かれて、益々悪化していると話すと、「ウーン」と考えてくれている。カレーが来て、生卵も注文して、私に割ってみろと言うが、できない。

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必死の私をじっと見る磯部さん。卵はじっと見つめられても卵だ。なんだかおかしくなってきて私は吹き出してしまい、彼もアハアハと笑い始めた。さっと自分で割り、カレーにかけて食べ始めた。

「僕のほうは飲酒の欲求はあまり訪れなくなってきたから、クリニックもそろそろ辞めようかと思ってる。医者の判断を待ってるところ」と福神漬けをパリパリさせている。私はクリニックで考えるように言われた卵と親の関係を彼に話してみた。

「君は経歴からすれば殻がないで育ったほうだよね」と彼は言い、「殻をお大切にしてるとか?」と聞いてきた。

「そう、殻が欲しいのかも。で、閉じこもりたいとか。みのむしみたいに」と私は言った。

「でも卵でなくてもいいわけよね。殻なんて。貝だって、蛇の抜け殻だって、殻でしょ」

「ピーナッツだって殻あるよ」と彼。

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