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「イキウメ」から「刀剣乱舞」まで…舞台映像を未来に残すための課題とは?「EPADシンポジウム2022」が開催

MOVIE WALKER PRESS

舞台公演の記録映像を未来に残そうと、2020年にスタートしたEPAD(緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業)。なまものである舞台芸術のアーカイブを、人々の共有財産としてオンラインで閲覧可能にし、記憶・感覚をよみがえらせるきっかけづくりを行っている。舞台芸術を見たい人、創りたい人、文化を愛するすべての人に新しい出会いをもたらすことを目指して活動しているEPADがこのたび「撮る、のこす、使う!〜舞台公演映像の利活用をめぐるシンポジウム〜」を12月1日(木)にオンラインで開催する。

その時々で、人々の心を震わせてきた舞台公演の数々。EPADでは、すでに約1300本もの舞台公演の記録映像を収集し、今年度中に1700本を突破する見込み。そのうち400本あまりは、配信ができるよう権利処理を継続中だ。収集した舞台映像のジャンルは多岐にわたり、演劇やミュージカル、バレエやコンテンポラリーダンスといった舞踊作品のほか、2.5次元ミュージカルまで揃っており、舞台を愛するすべての人にとって、自分ごととして考えずにはいられない。

今回開催されるシンポジウムでは、これらの舞台公演映像が教育、研究、国際交流の各現場でどう活用されているのか、そしてコロナ禍を経てさらにどのように活用できるのか、その具体的な方法や可能性について考えていく。

■未来のクリエイターを育てる!教育現場でも積極的に活用

第一部のテーマは「教育・研究の現場から」。EPADが収集した舞台映像は、早稲田大学演劇博物館に収蔵され、教育や研究の現場でもおおいに活用されている。第一部では、教育者や演劇研究者の視点から、活用の可能性を話し合っていく。

登壇するのは、アングラ演劇を専門とする演劇研究者で、近畿大学准教授の梅山いつきや、早稲田大学演劇博物館館長で文学学術院教授でもある岡室美奈子のほか、玉川大学芸術学部演劇・舞踊学科の准教授、多和田真太良、日本大学芸術学部演劇学科准教授の松山立が登壇。モデレーターは跡見学園女子大学マネジメント学部専任講師、国際演劇協会日本センター事務局長代理の横堀応彦が務める。

早稲田大学演劇博物館は、アーカイブのプロフェッショナルとして監修を務めるかたちでEPADと協業し、ともに舞台芸術を未来に残すために尽力してきた。日英2か国語で検索できる「ジャパン・デジタル・シアター・アーカイブズ」(JDTA)という舞台公演映像の情報検索サイトが開設され、収集された映像のほとんど全部が、早稲田大学演劇博物館にて予約制で閲覧可能に。舞台ファンはもちろん、これらの映像が教育の場でどのように役立っていくのか、そして未来のクリエイターの糧となるのか、興味深い議論が展開されそうだ。

■海外に日本の舞台芸術のすばらしさを伝える取り組みも

第二部のテーマは「国際交流の現場から」。国際交流基金が始めたYouTubeチャンネル「STAGE BEYOND BORDERS」では、日本を代表する舞台作品を7言語字幕付きで無料配信する取り組みを行っているが、EPADはそのうち、演劇・舞踊・伝統芸能など50作品を提供している。こちらには「刀剣乱舞」など2.5次元ミュージカルの人気作品も公開されており、本作の再生回数は現在118万回を突破。日本に古くから伝わる伝統芸能だけでなく、現代の日本ならではのコンテンツも入っているため間口が広く、国内外から好評を得ている。第二部では国を横断するプロジェクトに関わってきたディレクターやコーディネーターが登壇し、日本の舞台芸術のすばらしさを海外に伝える様々な可能性について話し合っていく。

登壇者は、京都国際舞台芸術祭KYOTO EXPERIMENTの共同ディレクターである川崎陽子や、国際共同制作作品や海外ツアーなどにおける海外フェスティバルや劇場との渉外業務を担当してきたSPAC-静岡県舞台芸術センター芸術局長の成島洋子のほか、緊急事態舞台芸術ネットワーク/ゴーチ・ブラザーズの伊藤達哉、先日パリ公演を終えたばかりの劇団「贅沢貧乏」制作の堀朝美。モデレーターはEPAD2022の事務局長、三好佐智子が務める。

昨年行われたシンポジウムでは、「配信とリアルの舞台をどう棲み分けていくか、どう共存していくのかが課題。劇場に舞台を観に来られない人たちがどのように疑似体験できるか、そして舞台創作に関わる人たちの権利がどう守られるか、これらが整理できれば新しい形が見えてくるのではないか」(ネルケプランニング・松田誠)、「文化はタダじゃないというのは心理だが、一方で文化はすべての人にあるべきだとも思う。だからお金を払う人だけじゃなく、オンラインで無料視聴できるものこそ、入り口として有効なのではないか」(溝端俊夫・ダンスアーカイヴ構想)といった、舞台人たちによる興味深い意見が飛び交ったが、今年はどのようなディスカッションが展開されるのだろうか?

今回のシンポジウムでは、第一部、第二部ともに事前の申込みは不要で、イベント公式サイトから視聴可能となっている。あらゆる舞台のアーカイブ化が実現することで、様々な活用の可能性に満ちているEPADの事業。果たしてゲスト陣は、舞台映像の活用についてどんな熱い意見を交わしていくのか。舞台だけでなくカルチャーを愛するすべての人に、ぜひご覧いただきたい。

文/山崎伸子
 
   

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