
日本の現在、そして未来―。少子化の中で運命に翻弄されながらも懸命に生きる若者を描く社会派小説!※本記事は、花田由美子氏の小説『サトゥルヌス』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
一九九七年 ナオミ@社員寮
市役所に行った。窓口の人は申し訳なさそうに告げた。
「離婚や死別なら市営住宅の補助や保育園料の減額があるんですけどねぇ。職業訓練給付金も、未婚だとねぇ」
「未婚と、死別や離婚、同じ母子家庭なのに? どうしてですか」
納得できない。
広告の後にも続きます
「国の法律や市の条例で決まっていて。私も変だと思いますが……。どこかの市町村では独自の対策を取っているかもしれませんが、県内の市町村はどこも」
庁舎内に突然、雷鳴がとどろく。
「そんな……」
雷鳴が大気を裂く。
「申し訳ないですねぇ。本当に。子どもの貧困率は、二人親世帯では一割くらいのはずです。でも、一人親世帯では五十パーセントを超えてるんですよ」
「アタシも子どもも、その貧困家庭ってのに一直線……」