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意識を手放しバンジージャンプに挑戦「大成功!」と思いきや…

幻冬舎ゴールドライフオンライン

意識や時空を操る者、霊能力者、予知能力者…ありとあらゆる異能力者が織りなすエンターテインメント小説。※本記事は、棚小路蔵人氏の小説『異能クラブ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。


(弐)

自在に意識を操作することができる気喪力異能力者、神谷仁(かみやじん)三六歳会社員

ある時、神谷は、いいことを思いついた。この能力をバンジージャンプに使えるのではないかというわけである。そもそも、バンジージャンプは、ジャンプ台にまでは行くことができても、そこから一歩を踏み出すことができずに尻込みしてしまい、みんなに迷惑を掛けることになるわけである。臆病者、小心者といわれて、馬鹿にされてしまうのである。

「せっかくこんな田舎まできて、『ちょっと待って、ちょっと待って』と言うばかりで時間ばっかり掛けたあげく、結局飛べないと言うのかよ。何て情けない奴だ」ということになる。

ところが、そこで気を失えば、逡巡して人に迷惑を掛けなくて済むし、簡単に飛べるすごい奴、ということで、勇気ある人という名誉が得られることになる。これまで遠ざかっていた友人もこれでまた戻ってくるのではないか、と思ったのである。

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神谷には、自分が、全く平気な顔をして、バンジージャンプのお立ち台に立ち、谷底に向かって、両手を広げ、大鷲のように美しい姿で飛び出して行く様が、そして、その恐怖の体験を楽しそうにかみしめているかのような余裕にあふれた顔をして上がってくる姿が、更には、この神谷の勇姿を見て賞賛する友人らの姿が、まざまざと脳裏に浮かんできた。それを想像して、うれしくなった。

ただ、実際にやろうと思うと、これがなかなか難しいのに気がついた。

ジャンプ台に立ってもそこで気を失ってしまっては、踏み出すことができない。つまりは、足を一歩踏み出すか、体重を前に掛けて身体を倒して、正に飛ぶ直前の状態になってから、その状態の時に気を失わないといけないわけである。果たしてそのようなことは可能なのであろうか。こんな偶然のような瞬間に気を失うことができるかどうかを試す勇気がないことに気づき、没とした。

そもそも、奈落の底を目の前、というか足下にしながら、つまり崖のぎりぎりの端に立って崖下に足を一歩踏み出すか、体重を前に掛けて身体を倒すには、すでに飛ぶのと同じ勇気が必要なのである。それができるくらいならこんなに苦労していないのである。

そこで、次に、身体にロープを巻き付けてそのロープを背中から引っ張ってもらっておいて、その状態で目隠しをして飛び台の所まで行き、そこで落下地点に向かって前傾した姿勢で立ち、そこで気絶したところでロープを放してもらえばそのまま前に倒れて落下していく、という方法を考えた。これならロープがあるので落ちる心配もないので、行けるのではないかと思ったのである。

しかし、これは、そもそも目隠しをしてジャンプ台に向かうということ自体、いつ落ちるのか分からない状態で一歩一歩踏み出して行くので、緊張が続くことになり、もう目隠し状態だけで十分に恐怖であり、平気で落ちる台に向かって歩いて行けるはずもない。

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